認知症の最新医療

認知症の最新医療

<特集>向精神薬と高齢者
-注意点と副作用をふまえた安全な処方のために

29号 Vol.8 No.2 (2018年4月)

発売:2018年4月25日

価格:800円+税



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特集
29号 Vol.8 No.2 (2018年4月)

向精神薬と高齢者
-注意点と副作用をふまえた安全な処方のために

特集にあたって
柴田展人

 近年,高齢者医療の現場では,慢性疾患に対する治療薬の多剤処方(いわゆるpolypharmacy)が大きな話題となっています。医療安全の観点から,高齢者へ投与する薬剤は4,5種類以下にすべきとの指針も示されています。また,精神科領域でも統合失調症,うつ病などに対しても,多剤処方が問題となっています。認知症高齢者では,抗認知症薬に加えてBPSD(行動・心理症状)に対し,さまざまな向精神薬を併用せざるを得ない場面が多くあります。さらに,BPSDに対する抗精神病薬投与は,死亡率の上昇,保険適用の問題など,依然多くの課題があります。
 本特集では,向精神薬の効果の点よりも,敢えてネガティブな側面(注意点と副作用)に焦点を当て,各分野の専門の先生にご執筆いただきました。どの向精神薬でも高齢者には慎重に使用しなければなりませんが,先生方にはわかりやすく解説いただきました。病態,各薬剤の細部の情報,相互作用など,多面的な情報も含まれており,認知症高齢者のBPSDに対して実践的な内容になっています。
 高齢者へ向精神薬を使用する場面では,どのようなエビデンスに基づいた薬物療法を行うべきなのか,患者さん・ご家族にはどのような説明をするべきなのか,本特集がこのような疑問解決の一助になればと思います。

1.抗精神病薬
堀 輝   香月あすか   竹内裕二

 わが国でも高齢者数が増加しており,同時に認知症診療の重要性も高まっている。その際,behavioral and psychological symptoms of dementia(BPSD)症状のために対応に苦慮するケースも少なくない。BPSDの対応には予防や心理社会的介入が重要であるが,しばしば抗精神病薬の投与が検討され投与される。その際には,副作用に配慮した必要最小限の用量で短期間の投与が望ましいと思われる。実際には高齢者はほかの薬剤を内服しており相互作用や副作用の発現が多いため注意が必要である。現在,複数の抗精神病薬の使用が可能であるが,われわれはその薬理学的特長を理解したうえで使い分けを行ったり,剤形なども加味したうえで薬剤選択を行うことで実臨床への応用が可能になると考えている。

2.抗うつ薬
田尻美寿々  鈴木雄太郎

わが国は超高齢社会となり,高齢者のうつ病治療は重要性を増している。高齢のうつ病患者に対しても抗うつ薬は有効である。しかし,薬剤ごとに異なる副作用に留意しながら肝腎障害や心不全など,個々の身体合併症や常用しているほかの薬剤に合わせて抗うつ薬を選択し,低用量から慎重に漸増していく必要がある。高齢者ではとくにQT延長による不整脈などの重篤な副作用のリスクが高く,定期的な血液検査,心電図といったモニタリングが必要不可欠である。

3.抗不安薬
普天間国博

 高齢者は薬物動態が複雑で副作用も増悪しやすいため薬物療法は必要最小限にとどめるべきである。とくにベンゾジアゼピン系抗不安薬は転倒,誤嚥,せん妄発症リスクがあり高齢者では使用しづらい。薬物療法を行う前に不安や心配を軽減するような環境調整や精神療法を充実させるべきである。抗不安薬が必要な場合は安全性の高いタンドスピロンを優先すべきであるが,ベンゾジアゼピン系の薬剤が必要な場合は,副作用の比較的少ないロラゼパムが第一選択となる。狭義の抗不安薬ではないが,抗不安作用のある抑肝散は副作用が少なく高齢者でも比較的使いやすい。

4.睡眠薬
足立浩祥

 高齢者では不眠症状を訴えることが多く,その要因も多様である。加齢に伴う変化を病気として捉えていたり,不適切な生活習慣などのため不眠症状が持続していることもしばしば認められる。不眠の慢性化を防ぎ,睡眠薬の薬効を最大化するためにも,睡眠衛生指導が何よりも大切である。また,これは不必要な睡眠薬投与を避けることにもつながる。近年,ベンゾジアゼピン系睡眠薬以外の作用機序を有する睡眠薬が本邦でも処方可能となっている。高齢者では睡眠薬の使用により副作用をきたすことも多いため,睡眠薬の処方が必要な際には,不眠の病態と薬剤の作用機序から適切な薬剤選択が求められる。

5.抗てんかん薬
十河正弥  池田昭夫

 現在,高齢者てんかんの罹患者数は1%強といわれている。近年,本邦では高齢化が進行しており,日常臨床をするうえで高齢者てんかんを適切にマネジメントすることが肝要になってくると予想される。高齢者てんかんは,比較的少量の抗てんかん薬で発作が抑制できることも多いが,傾眠,ふらつきなどの副作用の影響を受けやすい点や,ほかの疾患を合併していることが多い点に注意する必要がある。ガイドライン上は比較的副作用,薬物相互作用の少ない新規抗てんかん薬が推奨されている。高齢者てんかんの診療ではガイドラインを参考にしながら,個人ごとに副作用とほかの内服薬との薬物相互作用に注意し,有効な薬剤を低用量で用いることが重要である。

情報発信

◆目で見る神経病理
小脳歯状核
藤城弘樹

◆神経内科学のトピックス
レビー小体型認知症診断基準の2017年改訂について
二村明徳  小野賢二郎

◆認知症に関連する用語解説
rt-PA静注療法/GPS:全地球測位システム
柴田展人

◆最近のジャーナルから
Yoon B et al. J Geriatr Psychiatry Neurol 30: 170-177, 2017 /
Fereshtehnejad SM et al. Alzheimers Dement 14: 10-19, 2018
小川純人

◆認知症患者の暮らしサポート情報
家族会・患者会を訪ねて
レビー小体型認知症サポートネットワーク-第4回
長澤かほるさん

◆認知症の人の思い、家族の思い
地方に住む父親が車の運転をやめないので困っています
認知症の人と家族の会 東京都支部


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