認知症の最新医療

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<特集>アルツハイマー病に対する治療薬の現状と展望-進行予防から根治治療へ

Vol.7 No.4 通巻27号(2017年10月)

発売:2017年10月25日

価格:800円+税



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特集
27号 Vol.7 No.4 (2017年10月)

アルツハイマー病に対する治療薬の現状と展望-進行予防から根治治療へ

特集にあたって
下田健吾

 本誌は1年に1回のペースで認知症に対する薬物療法を取り上げてきた。2年前の企画の段階では,根治治療を目指した薬物療法をクローズアップできるのではないかと考えていたが,アルツハイマー病根治治療薬の開発は臨床試験の段階で期待された結果が出ず,製品化の断念が続いていることは周知の通りである。その理由はさまざまであると思われるが,アルツハイマー病の病期にかかわらずアミロイドβ仮説に縛られていた面も要因の一つかもしれないと考えている。ここで強調したいのは,この期間は決して苦杯の連続ではなく,アルツハイマー病の病態にかかわる研究が進歩し,新たなアプローチによる新薬の開発が行われるようになったこと,さらに,現在の症状改善薬治療に対する有効性や限界などの議論が進んだということも忘れてはならない。
 そもそも臨床の場で重要なことは,個々の患者にとって有益な治療とは何かという問題について,今考えうる限りの引き出しから非薬物療法も含めた組み合わせを考えることであり,治療の是非や投薬による根治が何パーセントという問題ではないはずである。
 本特集では,臨床上の引き出しの中身を増やすべく,各方面のエキスパートから現在用いられている症状改善薬について根拠に基づいた中立的な立場でメリット・デメリットを解説してもらい,最後に根治薬の展望についても触れていただいた。その結果,きわめてわかりやすく公平性が高い特集になったと思う。各執筆者には感謝申し上げたい。

1.アルツハイマー病治療薬の現状
  抗認知症薬の有効性と限界
丸谷典子  工藤 喬

 高齢化が進むにつれ認知症も増加しており,アルツハイマー病(AD)の薬剤開発が進められている。抗認知症薬は根本治療薬(disease-modifying drug: DMD)と症状改善薬(symptomatic drug: SD)があるが,DMDはいまだ開発段階であり,実臨床で使用されているのはSDである。SDは根本治療薬でないため,ADの進行を止めるわけではなく,あくまで進行抑制効果があるのみである。しかし,ADL(activities of daily living)の保持効果や,家族の介護負担軽減効果,BPSD(behavioral and psychological symptoms of dementia)に対する効果なども報告されており,有効性も認められている。今回,SD使用の有効性や意義,使用法についてガイドラインなども交え整理する。

2.現状ではどのように使用するべきか

1)アセチルコリンエステラーゼ阻害薬の使い分け
清水秀明
 少子高齢化が進むわが国では,認知症に対して適切な治療を行いその予後を改善することは,患者や家族だけでなく,社会的にも必要とされている。わが国における認知症患者のうち,6割以上がアルツハイマー病(AD)患者であるため,ADに対する治療は非常に重要である。ADの中核症状に対する薬物治療として,アセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害薬であるドネペジル,ガランタミン,リバスチグミンのいずれかをまず選択する。高度になるとドネペジルのみが適応となる。AChE阻害薬には,それぞれ長所短所があり,臨床症状や病期,個々の症例により使い分ける。効果が不十分な場合や副作用が出現した場合は他剤への切り替えを考慮する。

2)メマンチンの使用法
松下隆司   下濱 俊
 メマンチンは,アルツハイマー病(AD)の治療薬として本邦で承認されているN-メチル-D-アスパラギン酸(N-methyl-D-aspartic acid: NMDA)受容体拮抗薬である。メマンチンは,単独またはコリンエステラーゼ(ChE)阻害薬と併用することにより中等度以上のADの認知機能障害に対して有効であるとされている。中等度では,メマンチンまたはChE阻害薬の一つを選択する。高度では,ChE阻害薬の一つであるドネペジルあるいはメマンチンを選択するか,これら2剤の併用を考慮する。

3)BPSDに対する抗認知症薬の使用
伊藤敬雄
 エビデンスとして確立はされていないものの,ほかの向精神薬を使用する前に抗認知症薬を使用することで,BPSD(behavioral and psychological symptoms of dementia)に対して良好な結果を得ることが少なくない。無関心・うつ状態にはコリンエステラーゼ阻害薬(ChE-Is),興奮・被刺激性亢進に対してはリバスチグミンかメマンチン,複数のBPSDを有する患者においてはChE-Isとメマンチンとの併用療法を試みることが推奨される。ただし,保険適用外使用の際には,リスクと利益のバランスについて患者や介護者と相談しなければならない。

3.アルツハイマー病治療薬の展望
  治験中の薬剤や根治治療薬の展望
鈴木啓介  新畑 豊  鷲見幸彦

 わが国でアルツハイマー病の治療薬として保険適用となっている薬剤はいずれも根治治療薬ではない。神経変性自体を治療の標的とした薬剤は「疾患修飾薬」とも呼ばれ,アルツハイマー病の根治治療薬として有望であり,多くの治験が実施されている。しかしアミロイドβ蛋白(Aβ)除去促進薬である「Solanezumab」は,有効性が検証できずに開発が中止された。別の機序の薬剤でも期待された薬効が発揮されないことが多く,疾患修飾薬で承認を得た薬はいまだにない。その原因として,アルツハイマー病を含む神経変性疾患に特有の問題があると考えられる。今後,治験に関係する者が一体となり疾患修飾薬の開発に取り組む必要がある。

情報発信

◆目で見る神経病理
レビー小体型認知症の病理診断基準
藤城弘樹

◆地域保健のトピックス
もの盗られ妄想にみる女性と老い
井藤佳恵

◆認知症に関連する用語解説
時計描画検査(CDT: clock drawing test)/ 多剤併用(polypharmacy)
柴田展人

◆最近のジャーナルから
Rosso AL et al. Neurology 89: 336-342, 2017 /
Fougere B et al. J Am Med Dir Assoc 2017 Aug 7. doi: 10.1016/j.jamda.2017.06.024
小川純人

◆認知症患者の暮らしサポート情報
家族会・患者会を訪ねて
レビー小体型認知症サポートネットワーク-第2回
長澤かほる さん

◆認知症の人の思い、家族の思い
認知症,本人からのメッセージ
認知症の人と家族の会 東京都支部

◆伝えたいこと,知ってほしいこと-母の介護を通して-第3回
もっと早くに知っていれば
岩佐まりさん


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