認知症の最新医療

認知症の最新医療

<特集>遺伝が関与する認知症
-主な認知症と遺伝子との関係について

Vol.7 No.2 通巻25号(2017年4月)

発売:2017年4月22日

価格:800円+税



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特集
25号 Vol.7 No.2 (2017年4月)

遺伝が関与する認知症-主な認知症と遺伝子との関係について

特集にあたって
山本泰司

 本号の特集では,「認知症における遺伝子の関与」をテーマに企画した。
 医学の進歩に伴ってこの30年余りで遺伝子研究による成果も増えており,近年,さまざまな病気が遺伝子レベルで解明されつつある。現在までに,癌(乳癌,大腸癌など),神経疾患(パーキンソン病,ハンチントン病など),生活習慣病(高血圧,糖尿病,脂質異常症,痛風など),精神疾患(ADHDなど),眼科疾患(加齢黄斑変性症など),およびいくつかの認知症にも遺伝が関与していることが分かってきた。
 しかし,遺伝子が関与するといっても,遺伝形式(優性遺伝,劣性遺伝)の違いやリスク遺伝子(遺伝学的危険因子)としての限定的関与であったり,さらに環境因子(生活習慣など)との複合的関与などによって,遺伝の影響の程度はさまざまである。したがって,遺伝子に関する知識が少ない一般の人々の理解は容易ではなく,また誤解も多い。
 そこで,本号の特集では,認知症の遺伝子研究に関する総論を一つ,さらに各論としてアルツハイマー病をはじめとする5種類の認知症に分類し,それぞれの専門家にわかりやすく説明いただいた。
  誌面の関係上,専門書のように詳細までは述べられていないものの,要点を分かりやすく述べられていることから,読者の皆さんが本特集によって認知症に対する遺伝因子の関与について知識を整理し,正しく理解するための一助となることを期待する。

1.認知症遺伝子研究の歴史 
桑野良三

 認知症も多くの病気と同じように,両親から受け継いだゲノム情報をベースに年齢・性別・代謝など,個人を特徴つける生体内環境,ならびに教育・食事・運動の生活習慣や社会活動などの環境因子が複雑に影響して発症すると考えられる。集団感染や公害・薬害など因果関係が明確な場合を除いて,多様な環境因子のなかから病気の原因や発症機序を解明するのは困難なことが多い。一方,大多数を占める孤発性脳疾患も少数ではあるが,同じ臨床病型を示す多発家系が存在する。この多発家系を対象にした病因遺伝子の解析,および代謝産物や異常タンパク蓄積など神経化学や病理学的知見を手がかりに,認知症遺伝子解析は急速に進んだ。

2.アルツハイマー病
池内 健   原 範和

 遺伝要因が最も強く関与するアルツハイマー病(Alzheimer’s disease: AD)は常染色体優性遺伝性ADであり,APP,PSEN1/2がその原因遺伝子として同定されている。一方,ADの大半を占める孤発性ADに対する最大の遺伝的リスクはAPOE多型である。APOE ε4がADの発症促進に寄与するのに対し,APOE ε2は発症に対し防御的に作用する。本邦のAD症例の約半数はAPOE ε4が陽性である。次世代シーケンサーを用いた解析により,頻度は低いものの発症への影響が大きいレアバリアントがTREM2,SORL1,ABCA7などに同定されている。遺伝的リスクが高い未発症者を遺伝子解析により選別し,予防的介入を試みる治験が海外で始まっている。パーソナルゲノムに基づいた認知症におけるプレシジョン医療に向けた動きが加速している。

3.脳血管性認知症
小野寺 理

 脳小血管の機能がわかるにつれ,脳小血管を首座とする疾患を脳小血管病と呼ぶようになってきている。脳小血管は,排泄機構や動的な血流再配分機能を持つことが指摘されており,脳小血管病は脳血管性認知症の背景疾患ともいえる。遺伝性の脳小血管病の検討から基底膜にかかわる疾患は出血性病変を伴い,一方,平滑筋細胞が関与する疾患では認知症や歩行障害が主体となることが示唆される。孤発性の脳血管性認知症でも,平滑筋細胞層の消失が指摘されており,このことは,動的な血流再配分機能の重要性を示唆している。今後は,脳小血管の動的な機能と認知症の関連に注目し,診断方法と介入方法の検討が期待される。

4.レビー小体型認知症
瓦林 毅    東海林幹夫

 レビー小体型認知症(DLB),パーキンソン病(PD)では,レビー小体病として同じ発症機序が想定されている。その危険因子としてグルコセレブロシダーゼ遺伝子や(GBA)α-シヌクレイン遺伝子(SNCA)などが報告されている。家族性PDでは常染色体優性遺伝ではSNCA,LRRK2,VPS35などが,常染色体劣性遺伝ではParkin,PINK1,ATP13A2などが同定されている。遺伝子異常の解析から,PD,DLBの発症機序としてα-シヌクレイン毒性,エンドゾームライソゾーム機構の障害,ミトコンドリア障害などが想定されている。これらを標的にした疾患修飾療法が開発されており,その一部は臨床第Ⅱ相試験が開始されている。

5.前頭側頭葉変性症と主な遺伝子変異
河邉有哉  森 康治

 前頭側頭葉変性症(FTLD)とは前頭葉・側頭葉を主体とする神経変性を認める症候群である。その原因となる遺伝子変異が近年次々と明らかになってきた。これらの家族発症例は欧米諸国に多いが,本邦のFTLD症例ではそのほとんどが孤発性である。ほかの認知症性疾患と同様に,FTLDにも数種類の蓄積タンパクが明らかとなり,その種類によって神経病理学的に分類ができるようになった。しかし,その疾患病理と臨床症候との間に1対1の対応は認められていない。また,これらの病態機序は明らかでない部分が多く,遺伝子変異と異常蓄積タンパクの蓄積メカニズムや適切な治療標的の同定などについて,今後の研究の発展が待たれる。

6.その他の認知症
(紀伊半島の筋萎縮性側索硬化症/パーキンソン認知症複合)
小久保康昌

 紀伊半島南部は,筋萎縮性側索硬化症(ALS)の多発地として知られ,過去 60年あまりに亘って原因究明がなされてきた1-3)。 近年の遺伝学的研究の成果により,かつて“牟婁(むろ)病”と呼ばれた本疾患の本態が,明らかにされつつある。本稿では,紀伊半島南部に多発する神経難病の最新の疾患概念について解説するとともに,最近紀伊半島多発地のALS症例で報告されたoptineurin 変異とC90rf72変異に関する文献を紹介する。

情報発信

◆目で見る神経病理
脳内アミロイド沈着
藤城弘樹

◆精神医学のトピックス
認知症とせん妄
下田健吾

◆認知症に関連する用語解説
Dual task(デュアルタスク) /スタチン系高脂血症治療薬(スタチン)
柴田展人

◆最近のジャーナルから
Saha S et al. Am J Geriatr Psychiatry 24: 870-878, 2016 /
St John PD et al. Int Psychogeriatr 29: 535-543, 2017
小川純人

◆多職種連携-衣食住を中心に
認知症患者さんの「食」と多職種連携-3
食の変化への気づきとケア
山田律子

◆認知症患者の暮らしサポート情報
家族会・患者会を訪ねて
彩星の会-第4回
井藤佳恵

◆認知症の人の思い、家族の思い
本人の思い・家族の思い
認知症の人と家族の会 東京都支部

◆伝えたいこと,知ってほしいこと-母の介護を通して-第1回
MCIって何ですか?
岩佐まりさん


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