認知症の最新医療

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<特集>権利擁護-認知症高齢者が当たり前の生活をしていくために必要なこと

Vol.5 No.3 通巻18号(2015年7月)

発売:2015年7月25日

価格:800円+税



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特集
Vol.5 No.3 通巻18号(2015年7月)

権利擁護-認知症高齢者が当たり前の生活をしていくために必要なこと

特集にあたって
井藤 佳恵

 認知症を抱える人の「権利擁護」ということがいわれる。だがそもそも私たちは,自分が持つ権利についてさえ,どれほど考えたことがあるだろう。自分が有する権利さえ知らずに,他人の権利について考えることができるのだろうか。  おそらく私たちは普段,それが権利であると意識する必要もないほど当たり前に,多くの権利を享受している。自分の家と思える場所を持ち,自分で選んだ人との関係のなかに生きる。健康に不安を感じれば病院に行き,困ったと思えば誰かに相談し,相応の扱いを受ける。この当たり前の生活が,実はとても脆弱な基盤の上に成り立っていることを,認知症医療にかかわりながら思う。  本特集は,認知症高齢者が「当たり前の」生活をしていくために必要なことについて,これまで筆者に多くの示唆を与えてくれた先生方にご執筆いただいた。ご寄稿くださった先生方に深謝申し上げるとともに,本特集がさまざまな立場にいらっしゃる専門職の方たちにとって,認知症を抱える人たちの「当たり前」の生活を守ることについて,今一度考えていただける一つのきっかけになれば幸いです。

1.認知症高齢者が認知症医療を受けること
厚東 知成

 地域拠点型認知症疾患医療センターには,早期診断・早期治療,BPSD(behavioral and psychological symptoms of dementia)の治療,身体合併症への対応,人材育成と地域連携などの機能がある。これを権利擁護の側面から言えば,認知症者の自己決定を支えながら,精神と身体の両面で適切な医療を提供し,認知症患者が住みやすい街づくりを推進する役割である。またその活動が独善に陥らないように,第三者機関や地域に対して透明性を保っていく必要がある。医療や介護の公正さは,病院に限られた問題でなく,地域全体で担保されなければならない。認知症疾患医療センターを中心に,各職能団体が連携をとりあって,互いの活動をチェックする体制が求められる。

2.認知症高齢者の生活を支える医療
山崎 英樹

 診療所型認知症疾患医療センターとしての当院の外来統計を振り返ると,相談元は地域包括支援センターや居宅介護支援事務所が多く,相談目的は鑑別診断とBPSDへの対応が多い。9割にかかりつけ医がおり,6割がすでに要介護認定を受けていた。アルツハイマー病が5割,レビー小体病が2割であるが,精神疾患との鑑別も必要であった。診断により,新たに介護サービスの導入や見直しの契機となったのは3割であり,介護施設への緊急入所は1割である。医師の訪問を要したのは6%であった。生活を支える医療について,そもそも生活を容赦なく根こそぎにしかねないという意味で,診療の最初につまづく「告知」から考えてみた。生活を支える医療は,働くこと,愛すること,苦悩することにかかわりながら,生活の「意味」を支えることこそ,大切にされなくてはならない。

3.認知症高齢者が当たり前の対人関係を持つこと
伊東 美緒

 認知症ケアとは,BPSDにいかに対応するかではなく,BPSDを起こさないアプローチを考え,実践することだと考えている。ケアスタッフは,病院や施設のスケジュール通りに業務を遂行しなければならないプレッシャーを感じながら,多数の患者/利用者のケアを同時に行わなければならない。今のままではよくないと感じていても,組織のルールに抗うのは困難であり,大きな葛藤を抱えている。そのため,ケアのあり方を改善するのは第三者が思うほど簡単なことではない。そこで,ユマニチュードの技術のうち,一人でも取り組めるものを紹介しながら,“認知症高齢者にとっての”対人関係のあり方について検討する。

4.認知症高齢者の在宅介護
井藤 佳恵

 平成14年に「新障害者プラン」が策定され,精神障害者の脱施設化の方針が示された。そして平成27年に発表された新オレンジプランでは,「認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現」が基本目標として掲げられた。これらの施策が推し進められるなかで,認知症を抱える親の介護者の役割を,精神障害を抱える人たちが負うことが期待される状況が生じている。このような状況にある世帯に対する支援は立ち遅れており,認知症高齢者と精神障害を抱える介護者の双方の支援を包括的にコーディネートしていくためには,高齢者医療・福祉に携わる者が精神疾患の知識を持って介護者をみること,精神保健福祉に携わる者が認知症の知識を持って高齢化した精神障害者の親をみることが求められる。

5.住まいと財産の保護-住まいを失わないために
中田 佐保子

 成年後見制度の基本理念のひとつである「ノーマライゼーション」。障害を持つ人を特別視することなく,等しく自立した普通の生活(ノーマルな生活)を送ることができる社会の実現を目指そうという考え方である。しかし,後見人だけではその実現はできない。なにが普通の生活かは,ひとりひとり違う。どれほどシンプルに生活していても,いろいろな要素が複雑に絡み合っている。さまざまな視点からのさまざまな支援が必要であり,それがひとつにつながってはじめて,「ノーマライゼーション」の理念が実現できるのだと思う。後見人もその支援の輪のなかにいる。

情報発信

◆目で見る神経病理18
海綿状変性
藤城 弘樹

◆老年医学のトピックス
フレイル
小川 純人

◆認知症に関連する用語解説
認知症カフェ/DIAN研究
柴田 展人

◆最近のジャーナルから
Yang EJ et al. J Am Geriatr Soc 62(1): 40-46, 2014 /
Lai EC et al. J Am Geriatr Soc 63(5): 869-876, 2015
山本 泰司

◆認知症患者の暮らしサポート情報
家族会・患者会を訪ねて
井藤 佳恵

◆認知症の人の思い、家族の思い13
妻より必ず長生きするぞ!(後編)
認知症の人と家族の会 東京都支部


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