認知症の最新医療

認知症の最新医療

<特集>アルツハイマー病とその鑑別疾患-アルツハイマー病との鑑別が重要な疾患

Vol.6 No.1 通巻20号(2016年1月)

発売:2016年1月25日

価格:800円+税



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特集
Vol.6 No.1 通巻20号(2016年1月)

糖尿病と認知症-糖尿病と認知症の相互連関を見据えた予防・治療

特集にあたって
山本泰司

 超高齢社会を迎えたわが国において,認知症患者数は増加の一途をたどっております。高齢者における認知症は,本人の日常生活機能や生命予後を規定するだけでなく,本人および介護者のQOL低下につながることが知られており,その予防・治療対策ならびに認知機能や身体機能の定期的な評価は重要と考えられます。また近年の知見から,糖尿病をはじめとする生活習慣病はアルツハイマー病や血管性認知症の病態に深く関与していることが次第に明らかになってきています。糖尿病の場合,動脈硬化などの血管性要因に加えてインスリン抵抗性や高血糖に関連した代謝性要因の関与が考えられますが,その一方で認知機能低下と低血糖や日内血糖変動との関連性も指摘されるなど,糖尿病と認知症の相互連関がより詳細に解明されてきています。
 今回の企画では,糖尿病と認知症との間にどのような接点があるのか,さらには両者の相互連関を見据えた実際的な予防・治療についても取り上げました。具体的には,糖尿病患者における認知症の発症機序やその特性,認知症予防に向けた栄養管理,ならびに認知症高齢者における糖尿病管理について,各分野のエキスパートの先生方から最新知見や研究成果を交えて非常にわかりやすく解説,紹介いただきました。本特集を通じて,糖尿病と認知症との相互連関について一層理解が深まり,認知症や糖尿病の実地診療をはじめ高齢者の医療や介護に携わる多くの方々にとって一助となれば幸いです。

1.糖尿病における認知症の発症機序
鈴木 亮

 糖尿病患者の脳では,健常者と比較して,側頭葉内側や前帯状領域などの萎縮がみられる。障害部位と低下する機能には関連があると考えられるが,局所的な萎縮が生じる機序は不明である。糖尿病で認知機能が低下するメカニズムの仮説として,① 一過性の高血糖や低血糖など血糖の急性変動,②全身のインスリン抵抗性に伴う脳へのインスリン移行障害,③脳ミクログリア活性化に伴う炎症性サイトカイン分泌とニューロンのインスリン作用低下,④血管障害による慢性的な低灌流などの関与が提唱されている。インスリン経鼻投与の効果が注目されているが,長期の影響はまだ明らかでない。

2.糖尿病患者における認知機能低下とその評価
羽生春夫  深澤雷太  畑中啓邦

 糖尿病は,循環障害,代謝異常,アルツハイマー病理の促進などの“合わせ技”によって,認知機能の低下を引き起こし,認知症の発症閾値を低下させるものと考えられる。一般に,糖尿病患者は近時記憶の障害に加えて,注意・集中力や実行機能,精神運動機能の障害を伴いやすい。臨床的にアルツハイマー病(AD)と診断されても,前述の病理・病態を合併し前頭葉機能である実行機能や注意・集中力の障害を伴うことが多い。したがって,MMSEよりもMoCA-Jのほうが認知機能の低下を検出しやすい。1分間スクリーニング法(動物テスト)も簡便で利用価値が高い。糖尿病によって,ADや血管性認知症のほかに,両者の背景病理よりも糖代謝異常が深く関与する病型(糖尿病性認知症)が存在し,治療やケアの観点からも早期診断と鑑別が重要である。

3.認知症の予防・進行抑制に向けた栄養管理
植木 彰

 糖尿病は血管性認知症およびアルツハイマー病の危険因子である。血糖管理としては食後高血糖,血糖変動を抑えることが重要であるが,高齢者や認知症がすでにある場合には,低血糖の危険性があるため,HbA1cは極端に厳密に下げないほうがよい。
 認知症患者は糖尿病の有無にかかわらず,さまざまな食行動異常がみられ,炭水化物や甘いものを非常に好む一方で,緑黄色野菜や魚・肉の摂取が少なく,ビタミンB群,葉酸,抗酸化ビタミン,ミネラル,たんぱく質が不足している。また,カロリー不足によるやせも認められる。これらの点より,食事指導では単なるカロリー制限よりもバランスを重視することが重要である。  食事療法は高齢者のフレイルを予防する手段としても有力である。

4.認知症を合併した糖尿病患者の治療管理
櫻井 孝

 糖尿病は中年期~高齢期を通して認知症のリスクである。糖尿病に認知症が合併した例では,糖尿病の管理と,認知症の治療を同時に行うことが重要である。高齢者糖尿病の管理目標ガイドラインが海外からいくつか提唱されており,①健常高齢者ではHbA1c 7.0±0.5%,②フレイルな高齢者では8.0±0.5%と提唱されている。経口薬の選択では,患者の病態,合併症,薬剤の特性,アドヒアランスを考慮する。インクレチン関連薬であるDPP-4阻害薬,およびGLP-1受容体作動薬は,単独では低血糖のリスクが低いこと,血糖の変動を改善させるため,認知症高齢者では理論上は第一選択薬となりうる。高齢者糖尿病では,低血糖を回避し,個々の症例において血糖管理目標値を適正に定め,薬物療法を工夫することが必要である。

情報発信

◆目で見る神経病理
アルコール性小脳変性症
藤城弘樹

◆地域保健のトピックス
待つ人がいるということ
井藤佳恵

◆認知症に関連する用語解説
幻の同居人(phantom boarder)/フレイル
柴田展人

◆最近のジャーナルから
Olde Rikkert MG et al. J Alzheimers Dis 41(1): 261-271, 2014 /
Droogsma E et al. Alzheimers Res Ther 7(1): 18, 2015
山本泰司

◆認知症患者の暮らしサポート情報
家族会・患者会を訪ねて
井藤佳恵

◆認知症の人の思い、家族の思い
老老介護-この先が不安
認知症の人と家族の会 東京都支部


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