認知症の最新医療

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認知症の最新医療

<特集>
アルツハイマー型認知症の疾患修飾薬の開発
-臨床治験はどの段階を迎えているか

1/25発売

34号 Vol.9 No.3(2019年7月)

発売:2019年7月25日

価格:800円+税



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特集
34号 Vol.9 No.3(2019年7月)

アルツハイマー型認知症の疾患修飾薬の開発
-臨床治験はどの段階を迎えているか

特集にあたって
小野 賢二郎

 今回,第34号の特集は「アルツハイマー型認知症の疾患修飾薬の開発 ―臨床治験はどの段階を迎えているか―」です。
 わが国は超高齢社会を迎え認知症患者の数が年々増加してきており,その数は現在約300万人を超え,今後さらに増え続けると推定されています。なかでもアルツハイマー型認知症(Alzheimer’s dementia:AD)は認知症の中で最も多い疾患です。現在,わが国ではADの治療薬としてコリンエステラーゼ阻害薬であるドネペジル,ガランタミン,リバスチグミンおよびNMDA阻害薬であるメマンチンが許可されていますが,これらの薬剤は投与を続けても認知機能低下の速度を低下させることができないため,速度を低下させる薬剤,すなわち,投与によってADの進行そのものを修正できる疾患修飾療法(disease-modifying therapy:DMT)の開発が期待されています。
 ADの病理学的特徴としては,アミロイドβ蛋白(Aβ)から成る老人斑,タウ蛋白から成る神経原線維変化,さらに神経細胞脱落があげられます。なかでも病態生理においては,Aβがアミロイド前駆体蛋白からβ-およびγ-セクレターゼの働きにより切断・産生され,異常凝集し,シナプス・神経細胞を傷害する過程が重要な役割を果たすと考えられています(アミロイド仮説)。また,Aβが凝集していく過程では,モノマーから重合核が形成され,プロトフィブリル,さらには成熟線維が形成されますが,脳アミロイドとして蓄積する成熟線維が従来,神経毒性を発揮すると考えられていましたが,近年,早期・中間凝集体であるオリゴマーの毒性に注目が集まっています(オリゴマー仮説)。
 上記を背景にAβをターゲットにしたDMT開発研究がもっとも精力的に行われていますが,近年,DMTとして期待されていました,一部のセクレターゼ阻害薬や抗Aβ抗体は第Ⅲ相試験で有意な効果が認められなかったことが報告されました。治験不成功の原因として,1)診断や治験薬投与の時期が遅すぎたのではないか,2)Aβやタウ蓄積など脳に生ずる時系列変化を正確に測定するバイオマーカー,およびそれらを加味した診断基準がなかったからではないかと考えられました。
 もう一つの病態蛋白であるタウは,神経細胞内で凝集し神経細胞の機能障害を惹起,加速すると考えられていますが,抗タウ抗体やタウ凝集阻害薬なども開発されています。
 現実的には時間的猶予はあまり残されていない中で,本特集ではADのDMT開発の現状と課題,今後の可能性等に関して,この分野の第一人者の先生方にわかりやすく解説していただきました。本特集で取り上げさせていただいた内容を念頭に置きながら,少しでも皆様が今後の日常診療を進めてくだされば,編集者として幸いに思います。

1.セクレターゼ阻害薬開発の現状
富田 泰輔

 家族性アルツハイマー型認知症の遺伝学・分子細胞生物学的解析は,老人斑の主要構成成分であるアミロイドβ蛋白(Aβ)の産生機構の異常がアルツハイマー型認知症の発症に深く寄与していることを示している。そのため,脳内におけるAβ産生抑制はアルツハイマー型認知症の根本治療薬となることが強く期待され,産生酵素であるβセクレターゼ,γセクレターゼの活性を制御する低分子化合物が精力的に開発されてきた。しかし複数の化合物が第Ⅲ相治験において検討されたが,現段階でこのアプローチで成功した薬剤は存在しない。本稿においては,これらセクレターゼ阻害薬開発の現状,そして展望について述べる。

2.抗Aβ抗体
井原 涼子  岩田 淳

 抗Aβ抗体は,アルツハイマー病疾患修飾薬の中で最も長く臨床開発の場にあり,また現在最も盛んに開発されている薬である。現在までに第III相試験を突破できていないが,Aβの蓄積がかなりの量に達している有症状期からの投与では遅いかもしれないとの問題を提起し,プレクリニカル期を対象にした予防的介入に目を向けるきっかけを作った。本項では,抗Aβ抗体の臨床開発の歴史を振り返り,抗Aβ抗体特有の副作用にどのように対処し,また有効性を得るためにどのように投与対象を変遷させてきたかを解説し,現在の最新の開発状況について述べる。

3.Aβ凝集制御薬
杉本 あずさ  小野 賢二郎

 アルツハイマー病(Alzheimer’s disease: AD)の病態生理においては,アミロイドβ蛋白質(Aβ)が異常凝集して神経細胞を傷害する過程が重要と考えられ,アミロイド仮説と呼ばれている。また,従来は不溶性のAβ線維が脳に蓄積して神経毒性を発揮すると考えられていたが,最近では可溶性の低分子オリゴマーや,高分子オリゴマーといったAβ凝集過程の中間体の研究に注目が集まり,オリゴマー仮説として検討されている。
 これらの背景から,Aβ凝集制御薬は,ADにおける病変進展の阻止を狙って現在精力的に開発されており,実際に臨床試験まで進んでいる化合物もある。

4.抗タウ抗体
佐原 成彦

 現在,認知症患者の増加が大きな社会問題であるとこは言うまでもない。根本治療薬の開発は急務であり,治療標的の探索が進められている。その中でも,タウ蛋白が注目を集めており,タウ抗体治療法の開発が精力的に進められている。アルツハイマー病や進行性核上性麻痺を対象とした複数のヒト臨床研究が行われており,治療効果の判定結果が待たれている。生体でのタウ病変を可視化するタウPETイメージングを用いることで,抗タウ抗体による免疫療法の有用性が明らかになるであろう。

5.iPS細胞技術を用いたアルツハイマー病研究
近藤 孝之  井上 治久

 アルツハイマー病(Alzheimer’s disease: AD)はもっとも罹患患者の多い神経変性疾患であるが,治療薬は限られた対症療法しか存在せず,その対応は社会的急務と言える。 iPS細胞技術が開発され,AD患者の脳神経系細胞を用いて,病態研究・創薬開発が行えるようになった。本稿ではiPS細胞を用いたAD研究を紹介しながら,その有用性と将来展望について述べる。

原著

介護老人保健施設入所のアルツハイマー型認知症を対象とした認知症短期集中リハビリテーションの介入効果
齊藤 正典  寺西 久美子  徳永 敬助  北中 勇

情報発信

◆目で見る神経病理
側坐核
藤城 弘樹

◆認知症に関連する用語解説
パレイドリア/Z系睡眠薬
柴田 展人

◆最近のジャーナルから
Tsuno N et al. Geriatr Gerontol Int. 2019 Mar 12. doi: 10.1111/ggi.13644. /
Sado M et al. PLoS One.2018 Nov 12;13(11): e0206508. doi: 10.1371/journal.pone.0206508. eCollection 2018.
監修 山本 泰司

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廣瀬 知二

◆認知症の人の思い、家族の思い
父が亡くなった後,お金に執着する母に困惑しています
認知症の人と家族の会 東京都支部

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