認知症の最新医療

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認知症の最新医療

<特集>認知症とテクノロジー
-AI・IoT・ロボットとその可能性

1/25発売

32号 Vol.9 No.1 (2019年1月)

発売:2019年1月25日

価格:800円+税



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特集
32号 Vol.9 No.1 (2019年1月)

認知症とテクノロジー-AI・IoT・ロボットとその可能性

特集にあたって
小川純人

 わが国において65歳以上の高齢者数は2025年に3657万人(高齢化率30%)となり,2042年にはピークに達して3,878万人(高齢化率37%)へ増加すると予測されています。特に,75歳以上の後期高齢者の伸びが著しく,2025年の後期高齢化率は20%に達すると推測され,日本では今世紀半ばに4人に1人が後期高齢者になると予想されます。また,こうした後期高齢者の急速な増加は,認知症患者数の増加にも大きく影響すると考えられます。実際に認知症有病者数の将来推計を見てみると,認知症高齢者数は2012年に約462万人であるのに対し,2025年には約675万人へと急増し,2050年には1,000万人を超えるとすると予測されています。このように,今後増加の一途をたどる認知症に対して,予防,診断,ケアをはじめとした対策を効率的かつ早期から行うことは,国を挙げて喫緊の課題と言えます。こうした中,認知症の予防,早期発見,ケア,生活支援などの様々な分野・領域において,近年目覚ましい発展を遂げている人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT),ロボットなどのテクノロジーを活用する取り組みが,産官学の連携によって進められてきています。
 今回の企画では,認知症とテクノロジー,とりわけAI・IoT・ロボットとその可能性について取り上げ,各分野でご活躍の先生方から最近の知見・政策や研究成果を交えて非常にわかりやすく解説,紹介いただきました。本特集を通じて,認知症におけるテクノロジーの活用とその可能性について理解が深まり,認知症の臨床・研究をはじめ医療やケアに携わる方々の一助となれば幸いです。

1.認知症とAI・IoT・ロボットをめぐる政策・研究
安部 一真

 政府による認知症対策は,認知症患者数や認知症による社会的コストの増加などを踏まえ,近年かなりの進展をみせている。なかでも,認知症に関する課題をAI・IoT・ロボットで解決することを目指した政策・研究は目覚ましい展開をみせており,経済産業省・厚生労働省を中心とした政府が具体的な政策・予算措置を備えはじめている。

2.認知症テクノロジーの海外最新動向
今井 瑛里子

 全世界の認知症患者の数は2015年に4,680万人と推定され,2050年には1億3,150万人に増加すると予測されている。各国ではAI,IoTを活用し,認知症の予防から介護まで横断的にテクノロジーで解決する取り組みが活発化している。海外では,昨今普及しているデジタル機器を通して目,声,顔などの個人のヘルスケアデータを収集し,認知症の早期発見や診断支援の研究・実用化が進んでおり,日本より先行している。研究を加速させる鍵はAIで学習させるデータである。今後,認知症大国の日本から認知症先進テクノロジーを発信するためには,プライバシーや倫理問題などの議論を丁寧かつ迅速に進め,医産官学が連携してデータの蓄積・共有に取り組む必要がある。

3.AI・IoTと認知症早期発見
石田 学

 近年の人工知能の能力の進歩により,医療分野においてもAIを活用することが期待されている。現在,認知症を早期に発見するために,画像解析,一般の検診データ解析,遺伝子解析など多様な分野にAIを活用する研究が進められている。また,IoTデバイスを用いて位置,運動,会話,睡眠などのデータを収集することによって,対象者の行動の変化を検出する研究も行われている。臨床応用および社会実装に向けては課題が山積しているが,AI・IoTの活用によって医療・看護・介護現場を支援する新たなシステムが誕生することが期待される。

4.認知症のコミュニケーションツールとしてのロボット
近藤 和泉   大沢 愛子   相本 啓太

 認知症のケアで家族を最も困らせるのはBPSD(behavioral and psychological symptoms of dementia)である。BPSDの治療として,非薬物療法とケア(パーソン・センタード・ケア)が基本となる。また回想法は現在,弱いながらも確実なエビデンスが構築されつつある。パーソン・センタード・ケアはスタッフに対する特別なスキルの訓練が必要になる。また効果的に回想法を実施するためには認知症患者の個人史の把握と,長時間の会話が前提となる。しかし,現状では家族を含めて介護担当者が認知症患者に時間をかけて対応することは困難である。このため,記憶能力を持ち,長時間の会話にも耐えられるロボットには大きな利点がある。ただし,このようなロボットは国内外ともに存在せず,関連企業と協力した当センターでの取り組みにより,開発が急ピッチで進んでいる。

5.神経学的セラピー用アザラシ型ロボット・「パロ」による非薬物療法
柴田 崇徳

 アザラシ型ロボット・パロは,米国では「神経学的セラピー用医療機器」の承認を受けて,医療福祉施設や在宅で認知症患者などに利用されている。日本では「福祉用具」となっている。世界各国でのランダム化比較試験などによる臨床評価結果により,パロとの触れ合いが認知症者などの気分を向上し,痛み,不安,うつ,ストレスなどを改善する。また,徘徊,暴力,暴言などの問題行動も抑制・緩和する。これらの効果により,安全な「非薬物療法」として副作用が問題である向精神薬の投与を低減する。米国では高齢者向け公的医療保険のメディケアの保険適用になり,パロを用いるバイオフィードバック・セラピーが処方され,処置されると保険で精算できる。

6.メディカルゲノムと認知症
尾崎 浩一

 認知症,特にアルツハイマー病の発症には遺伝学的素因が大きく関与していることが知られている。遺伝的要因の解明をスタート点とすることにより,エビデンスに基づいた革新的な診断,治療法の開発といったプレシジョン・メディシンが可能になると考えられる。近年,遺伝的要因を解明するために大規模なゲノム解析が行われるようになってきた。大規模ゲノム解析の主流は全ゲノムにわたる一塩基多型を用いたゲノムワイド関連解析,次世代シーケンサーを用いた全エクソン,全ゲノム配列解析であり,生活習慣病をはじめとしたさまざまな疾患の解析に利用されるようになってきた。特にゲノムワイド関連解析については200以上の形質に関して,5,000報以上の報告がある(http://www.ebi.ac.uk/gwas/)。

情報発信

◆目で見る神経病理
ヘルペス脳炎
藤城弘樹

◆地域保健のトピックス
いわゆる困難事例の身体的健康について考える
井藤佳恵

◆認知症に関連する用語解説
老人性難聴/ICT医療
柴田展人

◆最近のジャーナルから
Ogama N et al. PLoS One 12: e0172484, 2017 /
Prosser AMJ et al. Dement Geriatr Cogn Dis Extra 8: 180-189, 2018
山本泰司

◆歯科と認知症-3
在宅高齢者における総合的な口腔機能向上システムの認知機能低下抑制効果について
武井典子

◆認知症患者の暮らしサポート情報
家族会・患者会を訪ねて
男性介護者と支援者の全国ネットワーク-第3回
津止正敏氏

◆認知症の人の思い、家族の思い
夫の介護をしてきたが,誰も理解してくれないので生きる望みが失せそうです
認知症の人と家族の会 東京都支部

これからの特集

※企画は変更する場合があります。

■Vol.9 No.2(通巻33号)

特集:認知症と血管障害-血管因子からみた認知症の病態と診断の変化

■Vol.9 No.3(通巻34号)

特集:アルツハイマー型認知症の疾患修飾薬の開発-臨床治験はどの段階を迎えているか

■Vol.9 No.4(通巻35号)

特集:新オレンジプランの現状と課題


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