認知症の最新医療

認知症の最新医療

<特集>
認知症の発症前と発症後それぞれに対する神戸市の取り組
―地域住民対象の疫学研究から学ぶもの

37号 Vol.10 No.2 (2020年4月)

発売:2020年4月25日

価格:800円+税



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特集
37号 Vol.10 No.2 (2020年4月)

認知症の発症前と発症後それぞれに対する神戸市の取り組
―地域住民対象の疫学研究から学ぶもの

特集にあたって
山本 泰司

 現在のところ,残念ながら認知症の医療には限界があり完治することはできない。そのため,現状では「認知症および軽度認知障害をいかに早く発見して対応を開始するか」,「認知症の発症前の段階でどのような対処方法が認知症の発症を抑制するのか,また認知症の初期段階でどのような対処方法が認知症の長期予後を改善するのか」,「認知症が進行した際に,自治体や家族・介護者がどのような対応をすることが望ましいのか」などの課題に関心が向けられている。
 そこで,本号では上記の疑問に対する1つの指標として,筆者の勤務する神戸大学および地元自治体である神戸市の取り組みを紹介することを目的に本特集を企画した。
 2017年から4年間の予定で,神戸大学および神戸学院大学,先端医療振興財団臨床研究情報センターの研究者たちが共同で,WHO神戸センターおよび神戸市の協力のもと,「認知症の社会負担軽減に向けた神戸プロジェクト」をテーマとして,数千から数万人規模の神戸市民を対象に臨床研究を行っている。また,2018年から神戸市は自治体単独で認知症に対する診断助成制度および事故救済制度を条例化し,全国初の取り組みとなる「神戸モデル」を発表した。
 本特集では,臨床現場の最前線で認知症の診療に取り組んでいる医療関係者に加えて,介護者,自治体それぞれの立場で,今どのようなことが行われており,どのようなことがどこまでわかってきているのかを紹介いただくこととする。

1 認知症の社会負担軽減に向けた神戸プロジェクト
永井 洋士

 認知症は要介護原因の20%を占める疾患であり,その早期発見・早期介入によって進行を遅らせ,さらには要介護状態への移行を阻止できる可能性がある。しかしながら,そうした取り組みはこれまでほとんど成功しておらず,その原因の一つとして,リスクのある個人を社会の中で効率的に同定する仕組みがなく,対象を絞った合理的な対策を講じ得ないことが挙げられる。そうした状況の下,「認知症の社会負担軽減に向けた神戸プロジェクト」は,神戸市民を対象として,認知機能に関連する横断的な調査を行い,一定期間の後に要介護認定との関係を評価するものである。この仕組みを地方行政に組み込むことで,個々人の要介護リスクに応じた市民サービスが提供できるようになり,今後行われる各種認知症対策事業の効果を定量的に評価できるようになる。

2 高齢者が要介護状態となるリスクの予測に関するコホート研究
小島 伸介

 筆者は,2008年に厚生労働省が作成し介護予防事業に用いられてきた「介護予防のための基本チェックリスト」と要介護認定を利用した研究を神戸市の協力の下で実施し,これが地域住民の要介護認定の予測に役立つ簡便なツールである可能性を見出した。現在,認知症の社会負担軽減に向けた神戸プロジェクトの一部として発展させ,研究を実施中である。今後,要介護者数を減らすためには,市民全体の現状とその後の状態を絶えずモニタリングして,予防のための対策を最も効果あるように立案・実施していくこと,すなわちラーニングヘルスシステムの構築と社会実装が喫緊の課題である。

3 認知機能低下が疑われる高齢市民における要介護状態発生リスクの定量化研究
古和 久朋

 神戸市が実施した「介護予防のための基本チェックリスト」により認知機能低下が疑われる回答パターンがみられた4,000人余りの市民を対象に,認知機能評価尺度(CFI),EQ5D等の質問表を2度郵送・回収し,2回目の回答時点での介護保険の認定状況を突合することにより,認知機能の低下による将来の要介護状態を予測する因子や質問項目を明らかにする研究が進行中である。本研究が完遂されることにより,コミュニティでの認知症の高リスク群の高齢者を早期に発見することが可能となり,その後の介入による認知症への進展予防につながることが期待される。

4 地域高齢者を対象とした認知症予防プログラムの効果
梶田 博之  尾嵜 遠見  前田 潔

 近年,種々の研究結果から,生活習慣が認知症の発症や認知機能低下に影響を及ぼしていることが明らかになってきた。それとともに認知症予防の重要性がいわれるようになり,全国各地で認知症予防教室等の取り組みが行われている。現在,筆者らは「認知症の社会負担軽減に向けた神戸プロジェクト」における研究の一つとして,地域高齢者に対する認知症予防プログラムの効果についての縦断的調査を実施している。

5 神戸市における認知症施策の紹介
長谷川 典子  前田 潔

 2018年4月に神戸市認知症の人にやさしいまちづくり条例を施行した。この条例をもとに,認知症「神戸モデル」を構築した。認知症になっても安心して暮らしていけるように,認知症事故救済制度を設計した。併せて,2019年1月に創設した認知症診断助成制度は,二段階方式のシステムである。第1段階は,身近な登録医療機関で,個別に認知機能検診を行う。認知症疑いであれば,第2段階を紹介し,認知症疾患医療センターレベルの鑑別診断が行える登録医療機関において保険診療で精密検査を行う。この際,診断までにかかる費用を助成している。診断後支援として,認知症疾患医療センターに専門医療・日常生活支援相談窓口を設置している。

シンポジウム記録

「響け,本人の声! 届け,家族の想い」 記録(1)
第38回日本認知症学会シンポジウム24(認知症の人と家族の会合同シンポジウム)

情報発信

◆精神医学のトピックス
REM睡眠行動異常症(rapid eye movement (REM) sleep behavior disorder: RBD)
下田 健吾

◆認知症に関連する用語解説
CHASE(Care, Health Status & Events)/FAST
柴田 展人

◆最近のジャーナルから
Nakanishi M et al. J Alzheimers Dis 74: 127-138, 202018 /
Takechi H et al. Dement Geriatr Cogn Disord, 2020 doi: 10.1159/000505871.
監修 小川 純人

◆薬剤師と認知症-3
抗認知症薬の服薬指導で注意すべきポイントは?
國津 侑貴  寺田 智祐

◆認知症の人の思い、家族の思い
認知症の義理の両親との同居に疲れてしまいました
認知症の人と家族の会 東京都支部


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