認知症の最新医療

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<特集>
成年後見制度Q&A
―制度が目指すところと現状の課題を知る

36号 Vol.10 No.1 (2020年1月)

発売:2020年1月25日

価格:800円+税



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特集
36号 Vol.10 No.1 (2020年1月)

成年後見制度Q&A
―制度が目指すところと現状の課題を知る

特集にあたって
井藤 佳恵

 2000年に始まった現在の成年後見制度は,「認知症,知的障害,精神障害などによって物事を判断する能力が十分ではない方について,本人の権利を守る援助者(成年後見人等)を選ぶことで,本人を法律的に支援する制度」である(家庭裁判所,法務省作成のパンフレットの記載より)。本制度が十分に利用されていないという認識から,2016年には議員立法により「成年後見制度の利用促進に関する法律」(平成28年法律第29号,以下「利用促進法」)が施行された。
 しかしながら,申立て手続きの煩雑さ,費用負担,成年後見制度そのものに対する不信感等により利用者が制度利用を躊躇する,あるいは利用を促進する立場にあるはずの関係機関の職員が制度利用を阻害するということが起こっている。また,申立ての際に必要となる「成年後見制度における診断書」について,専門医へのアクセスの難しさから書式が簡略化されたことが,成年後見制度とはどういった歴史と役割を持つ制度なのかということが知られずに診断書が作成されることにもつながっている。
 成年後見制度は権利擁護を主旨とするが,一方で権利を制限する性質を持つ制度でもあり,診断書の作成にあたる医師が制度に対する基本的な理解を持っていることが必要であろう。制度発足から20年を迎えようとする今,改めて成年後見制度とは何かということを振り返る機会をいただきたく,日ごろ成年後見業務に携わる諸先生方に寄稿をお願いした。本特集を通じて成年後見制度の課題を認識したうえで,有効な制度利用ついて議論が深められることを期待したい。

Q1
成年後見制度の概要について教えてください
井藤 佳恵

 わが国の成年後見制度の起源は,旧民法の禁治産・準禁治産制度にある。2000年に介護保険制度とともに始まった現在の成年後見制度では,禁治産・準禁治産制度がもつ「無能力者の財産保全のための制度」というイメージから,「判断能力が不十分である者の意思決定を支援する制度」への転換が図られた。成年後見制度にはいくつかの重大な課題があるが,現状ではこれに代わる制度がないことも現実である。ところが制度へのアクセスはよいとは言えず,同制度利用のもっとも大きな阻害因子は,自治体による首長申し立て手続きが進まないことであるとの報告がある。制度利用を促進するのであれば関係機関の体制整備は必須の課題であろう。

Q2
成年後見制度が目指すものは何ですか?
池田 惠利子

 介護保険制度と車の両輪として2000年に施行された成年後見制度は,2016年に成立した成年後見利用促進法によって,改めてその制度の存在意義が問われている。自己決定権の尊重のための意思決定支援や身上監護が重視され,本人にとってのメリットがある制度に変えようとされている。しかし,そのためには体制整備や担い手などの課題も明確になってきている。

Q3
成年後見制度申立ての準備段階における課題を教えてください
木村 亜希子

 認知症高齢者のケースワーク過程で「後見の申立て待ち」あるいは「後見人の選任待ち」といった話は,認知症高齢者を受け入れている病院や一時保護を行う施設においてしばしば聞かれていることだろう。近年,判断能力が著しく低下した高齢者が,この国で必要な支援を受けようとするとき,その金銭管理や身上監護を法的な根拠を以て行う者の存在は必須とされ,認知症高齢者のセーフティネットとして成年後見制度の利用需要は高まっている。しかしながら,冒頭に述べた「待機」の期間は思いの外長く,それは積極的なケースワークを必要とする認知症高齢者の時間を停滞させるばかりか,もとより成年後見制度の理念に反しているのではないだろうか。そこで本稿では,「待機」の一因となり得る,成年後見制度の申立て準備段階における代表的な課題について,現場目線を交え整理する。

Q4
成年後見制度運用に関する課題を教えてください
山田 祐司

 国の成年後見制度利用促進基本計画から,運用上の課題が明らかになってきた。一つ目は,わが国の認知症患者等の数に対して制度利用者数が極端に少ないことである。二つ目は,後見業務が本人の財産管理に偏りがちで,本人の意思決定に寄り添えていないケースがみられることである。三つ目は,本人や後見人を福祉的な視点から支える体制が整っていないことである。監督機関の裁判所としても福祉的観点からのサポートは現実的に難しいため,国の基本計画では,親族および地域の福祉・医療関係者等とチームで支える体制の構築を検討している。ただ,本人の権利擁護を実現するために最も重視すべきことは制度の周知であろう。

原著

高齢運転者の運転技能に関する自覚アンケート調査
牧 徳彦

情報発信

◆老年医学のトピックス
高齢者の血糖コントロール目標設定とDASC-8
小川 純人

◆認知症に関連する用語解説
ロコモ度テスト/アデュカヌマブ
柴田 展人

◆最近のジャーナルから
Bonfiglio V et al. J Alzheimers Dis 71: 889-897, 2019/
Oh ST et al. J Psychiatr Res 118: 31-37, 2019
監修 山本 泰司

◆薬剤師と認知症-2
認知症の入院患者に対するケアと支援
加藤 豊範

◆認知症の人の思い、家族の思い
少しぐらいもの忘れしてもいいじゃない,一日一回でも笑うことができれば幸せ
認知症の人と家族の会 東京都支部


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