認知症の最新医療

認知症の最新医療

<特集>認知症と血管障害
-血管因子からみた認知症の病態と診断の変化

33号 Vol.9 No.2(2019年4月)

発売:2019年4月25日

価格:800円+税



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特集
33号 Vol.9 No.2(2019年4月)

認知症と血管障害-血管因子からみた認知症の病態と診断の変化

特集にあたって
下田 健吾

 私は老年精神医学を中心に診療をしている臨床医で,これまで器質性の気分障害(脳卒中後うつ病や山下先生にご執筆いただいた血管性うつ病)に関心を寄せていた。そのため高齢者うつ病と血管因子(血管障害の危険因子)の関連は注目していたが,認知症と血管因子については血管性認知症との密接な関連という認識に留まっていた。ところが,実際に認知症や軽度認知障害の患者さんに頭部MRI検査を施行すると,ラクナ梗塞や白質高信号域が見られることが多い。臨床症状はアルツハイマー病を疑う症例であっても微小脳血管病変が見られることが少なくない。脳血管障害を伴うアルツハイマー病と診断することが多いが,症例によって混合性認知症と診断するべきか同僚と意見が分かれることがある。最近,血管性認知症と気分障害について総説を執筆する機会があった。文献を調べていくと血管性認知症のみならずアルツハイマー病においても血管因子の関与が近年注目されており,これまで混沌としていた血管性認知症の概念や病態について,より予防的な側面が注目されていることを知った。こうした自身の体験を通じ,読者の皆様にも是非認知症と血管因子について再考する良い機会になると思い本特集を立案した。各執筆者には玉稿を賜り紙面を借りて御礼を申し上げたい。
 超高齢社会にある本邦で,認知症患者の増加が深刻な問題として取り上げられているが,具体的な方策は定まっていない。欧米では認知症の発症率が減少しているという報告が相次いでなされ,認知症発症の危険因子も明らかとなっている。血管危険因子である生活習慣病への介入が発症率を低下させ,予防として重要な意味合いを持つと考えられている。本邦において認知症発症に関わる血管因子の問題が広く周知され,認知症予防についての認識や介入方法が進展し,ひいては認知症発症率が減少することを期待したい。

1.認知症と血管因子の関連-最近の知見
里 直行

 近年の研究により認知症と血管因子の関連が明らかとなりトピックスとなっている。本稿では従来の大きな梗塞や出血による脳血管性認知症(vascular dementia)だけでなく,脳小血管病変(cerebral small vessel disease: CSVD)や脳低灌流が認知症と関連するかといった最近の話題について紹介する。またこれらの血管因子に影響する糖尿病,脂質異常症,高血圧と認知症の関係についても簡単に述べたい。

2.脳血管障害による認知機能障害-血管性認知障害(VCI)を中心に
石川 英洋  冨本 秀和

 血管性認知症(VaD)は脳血管障害が原因となる認知症であり,米国国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)とAssociation Internationale pour la Recherché et l'Enseignement en Neurosciences(AIREN)による診断基準(NINDS-AIREN)はその最も代表的な基準である。本基準は臨床試験への応用を念頭に開発された経緯もあり,その特異度は高いものの感度が50%程度と低いという問題点がある。この事実は,VaDとそれ以外の認知症疾患を峻別することの難しさの裏返しでもある。近年ではVaD,アルツハイマー病(AD)のいずれにおいても血管因子が発症リスクとなることが知られ,是正可能な因子から早期に介入することの重要性が認識されるようになった。血管性認知障害(VCI)は,治療を優先する観点から,VaDの前段階である血管性軽度認知障害を含み,VaD,脳卒中後認知症に加え,アルツハイマー病理が共存する混合型認知症を包括する概念である。バイオマーカーや神経画像の研究が進み診断技術が向上する臨床現場において,血管性認知障害の概念および,それが提唱されるに至った背景を理解しておくことが望ましい。

3.血管性認知症−現状における問題点と今後の方向性−
梶川 博之  矢田 健一郎

 血管性認知症は,認知症の原因としてアルツハイマー病に次いで多い疾患である。脳血管障害に伴って生じるが,その病態は様々であり,明確な診断基準,分類は確立していないのが現状である。NINDS-AIREN診断基準が広く用いられているが,感度が低いという問題がある。脳血管性認知症で最も多い小血管病性認知症,アルツハイマー病ではともに脳アミロイド血管症の関連が示唆されており,両者の連続性も指摘されている。血管危険因子の管理が大切であり,とりわけ血圧管理の重要性が指摘されている。血管性認知症に対して抗認知症薬が有効であるとの報告があるが,保険適用の問題が存在する。

4.アルツハイマー病と血管障害―最近の知見
太田 康之  阿部 康二

 認知症の原因となる一番頻度の高い疾患はアルツハイマー病であるが,わが国を含め世界的に増加傾向であり,社会的問題となっている。アルツハイマー病の発症と進行には,脳血管障害の関与および脳血管障害を引き起こす生活習慣病―高血圧,糖尿病,高脂血症,メタボリックシンドロームの関与が,近年,数多く報告されている。そして,認知症治療薬や生活習慣病治療薬が,脳血管障害で引き起こされるneurovascular unit(NVU)の破壊やアミロイドβ蓄積を抑制し,アルツハイマー病への治療効果があることが発見されている。今後の脳血管障害を合併したアルツハイマー病の治療への応用が期待される。

5.血管性うつ病と認知障害や認知症との関連―認知症に移行する過程か
山下 英尚  濱 聖司  村上 太郎

 血管性うつ病患者ではうつ病の時期だけでなく,うつ病からの回復後にも全般性に認知機能の低下が持続していた。さらに血管性うつ病患者の経過を長期間観察していくと,脳血管障害を合併していない高齢者のうつ病患者と比べて認知症を発症した割合が高かった。この結果からは血管性うつ病は認知症に移行する過程であるとも言えそうだが,認知症の強いリスク因子であるとも言える。血管性うつ病患者で認知機能の低下が大きいことの要因としては,脳血管障害による直接的な認知機能の低下に加えて,うつ病自体の予後が不良であることも関係していると考えられる。血管性うつ病患者の治療を行う際には,うつ病自体の治療を十分に行うことに加えて,合併する高血圧や糖尿病などの治療にも注意を払うことが重要である。

海外視察レポート

デンマーク視察訪問レポート―歯科にみる認知症高齢者の福祉の旅―
桝谷 多紀子

情報発信

◆目で見る神経病理
レビー病理:扁桃体優位型
藤城弘樹

◆精神医学のトピックス
精神科病棟における認知症症例の入院治療の現状について
柴田展人

◆認知症に関連する用語解説
空の巣症候群/バリデーション療法
柴田展人

◆最近のジャーナルから
Lee KJ et al. Adv Ther 34: 481-494, 2017 /
Montgomery W et al. BMC Geriatr 18: 141, 2018
小川純人

◆歯科と認知症-4
認知症高齢者の食支援と歯科医療の重要性
山田律子

◆認知症患者の暮らしサポート情報
家族会・患者会を訪ねて(最終回)
男性介護者と支援者の全国ネットワーク-第4回
津止正敏氏

◆認知症の人の思い、家族の思い
夫が認知症になったことを近所の人には絶対に知られたくない
認知症の人と家族の会 東京都支部


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