認知症の最新医療

認知症の最新医療

<特集>身体合併症医療と終末期ケア
-それぞれの立場から

30号 Vol.8 No.3 (2018年7月)

発売:2018年7月25日

価格:800円+税



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特集
30号 Vol.8 No.3 (2018年7月)

身体合併症医療と終末期ケア-それぞれの立場から

特集にあたって
井藤佳恵

 認知症の病期に応じて,認知症医療にはさまざまな局面がある。予防から始まり,初期には抑うつやもの忘れの気づきへの対応,そして,認知機能障害の進行やBPSD(behavioral and psychological symptoms of dementia)が課題なる時期を経て,認知症の中期以降は身体機能の衰えが課題となる。人が生きることの終わりに死があり,認知症医療でも,いずれ終末期の医療とケアが大きな課題となる。しかしながら日常臨床のなかで得る実感として,認知症医療がやがては終末期医療につながっていくということに対する一般の認識は,まだまだ深くはないと感じる。
 今回の企画は,その人の終末期がもう訪れていることを,関与する者たちが共有する過程をテーマとした。認知症の経過のなかで嚥下性肺炎を繰り返すこと,食べない,あるいは食べられなくなっていくことを,われわれ医療者がどのように理解し,医療のなかに位置づけていくのか。認知症高齢者が病院ではない場所を最期の時間を過ごす場所として選んだとき,家族やスタッフがどのような葛藤を抱え,どのような過程を経て「その人がそこにいること」を受け入れていくのか。そして終末期ケアの脱施設化の流れと社会のあり方の変化について,それぞれの現場にいらっしゃる先生方にご寄稿をいただいた。
 ご寄稿いただいた諸先生方に深謝申し上げるとともに,この特集が,お読みいただく方々の心に何かを残すことを願っています。

1.認知症高齢者の終末期医療に関する意思決定支援
井藤佳恵

 終末期医療に関する意思決定支援を考える時,もっとも難しい過程のひとつは,今が終末期であるという認識を,かかわる者すべてが共有することなのではないかと感じる。 20世紀を通じて医学は人間の寿命の延長に寄与し,その過程で,命はいつか尽きるという感覚も,私たちの生活の実感から失われたのかもしれない。
 当初,あらゆる延命処置を望んでいた家族が,入院から2カ月ほどの経過で,終わりが近いことを曖昧ながら受け入れていくことを経験する。多くの病院で,その2カ月を同じ医師と病棟スタッフが担当することが難しい現状がある。しかし,本人にとっても残された者にとっても,もう二度とやり直すことのできない看取りの過程を,同じ医師,同じ病棟スタッフが担当し,同じ時間を過ごすなかで,互いの了解が成立していくことの大切さを思う。

2.誤嚥性肺炎をくりかえすようになること,食べられなくなるということ
犬尾英里子

 認知症が進行するとやがて嚥下障害が起こり,誤嚥性肺炎を繰り返し発症するようになる。多くの認知症患者は誤嚥性肺炎の改善,増悪を繰り返した後に死に至る。したがって認知症患者にとって「食べられなくなる」段階は病気の終末期の段階であり,患者が最期まで尊厳を損なうことなく生きるために,肺炎の治療をいつまで行うべきか,治療をしない選択肢はないのか,患者の意思,環境,身体の状態,完治の可能性など総合的に判断をする必要がある。

3.認知症と身体合併症をかかえる人とともに過ごす時間を通じて
油山敬子

 グループホームで暮らすレビ―小体型認知症の人が,末期がんで看取り期を迎えることとなった。家族はどこで看取れるかと悩み,介護職員も「最期の時間を過ごす場所」がここでよいのか葛藤を抱いた。こうした経過を筆者は,小規模多機能型居宅介護による在宅で暮らす本人への支援から継続した家族との親密な関係をもとに“家族の苦悩”を理解した。筆者は介護職員を指導する立場でもあり“職員の戸惑い”にも共感した。家族と職員の苦悩や戸惑いを現す言葉から,個々の心情についてや支援者のあるべき形を記した。家族が選んだ「場所」を肯定しながら,それぞれの感情が収まっていく過程の中心には,本人への思いがあった。

4.社会的文脈からみた認知症高齢者の支援の課題
足立浩祥

 現代社会とは,老年医学の立場からみると,①健康長寿社会,②多死社会,③死が身近にない社会,である。疾病構造の変化にともない,終末期ケアの脱施設化が目指されており,さまざまな加算が整備されている。しかし,その道のりは決して平坦ではないように思われる。認知症を持つ高齢者を支援するために,今後課題になると思われる諸問題を論じた。筆者の研究領域による偏りがあるかもしれないが,筆者の見立てでは,①貧困,②介護者支援,③死生観,④何らかの形での宗教との協働,である。高齢化の最先端を行くわが国は,優れた支援の確立を世界から期待されているともいえ,学際的・総合的アプローチが求められる。

情報発信

◆目で見る神経病理
皮質脊髄路
藤城弘樹

◆老年医学のトピックス
高齢者の低栄養とそのリスク評価
小川純人

◆認知症に関連する用語解説
世界アルツハイマーデー/健康寿命(healthy life expectancy)
柴田展人

◆最近のジャーナルから
Kamiya M et al. Geriatr Gerontol Int 18: 50-56, 2018 /
Kumfor F et al. Cortex 103: 350-359, 2018
山本泰司

◆歯科と認知症-1
歯科と認知症
櫻井 薫

◆認知症患者の暮らしサポート情報
家族会・患者会を訪ねて
男性介護者と支援者の全国ネットワーク-第1回
津止正敏氏

◆認知症の人の思い、家族の思い
高齢のご夫婦が,壮絶な介護の日々を頑張っておくられている姿と心の葛藤
認知症の人と家族の会 東京都支部


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