認知症の最新医療

認知症の最新医療

<特集>ホルモンと認知症・フレイル
-内科的疾患との関連で

Vol.7 No.3 通巻26号(2017年7月)

発売:2017年7月25日

価格:800円+税



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特集
26号 Vol.7 No.3 (2017年7月)

ホルモンと認知症・フレイル-内科的疾患との関連で

特集にあたって
小川純人

 フレイルは,身体予備能の低下を基盤として健康障害のリスクを有する状態として脆弱化した心身を捉えている概念と理解されています。また,フレイルは認知症と同様にADL(activities of daily living)やQOL(quality of life)に大きな影響を及ぼすことからも,その予防対策は超高齢社会を迎えたわが国において重要な課題となっています。さらに,これまでの知見から,認知症やフレイルの発症・進展と性ホルモンやビタミンDをはじめとするホルモンの血中濃度や加齢性変化などとの間に関連性が認められる可能性が示されるようになってきています。閉経に伴う女性ホルモンの欠乏状態をはじめ,加齢に伴ってホルモンの分泌,血中濃度,代謝速度,応答性にさまざまな変化が生じることが知られており,フレイルや認知機能低下のバイオマーカーとしての有用性やホルモン補充などの介入による改善効果も示唆されてきています。
 今回の特集では,フレイルや認知機能とホルモンとの間にどのような接点があるのか,とくに性ホルモン,甲状腺ホルモン,ビタミンD,インクレチンを取り上げ,各分野でご活躍の先生方から最近の知見や研究成果を交えて非常にわかりやすく解説いただきました。本特集を通じて,フレイル・認知症とホルモンとの関連性について理解が深まり,フレイルや認知症の臨床・研究をはじめ高齢者の医療やケアに携わる方々の一助となれば幸いです。

1.男性ホルモンと認知症・フレイル
川戸 佳

 男性ホルモンの脳の記憶への作用を考える。受容体であるアンドロゲン受容体 (AR)は,記憶中枢の海馬のグルタミン酸神経に発現している。このことから,加齢に伴うテストステロン(T)の減少は海馬の記憶能力の低下を引き起こす原因になることが示唆される。一方,神経由来栄養因子(BDNF)は老化しても海馬では減少しないことがわかってきている。したがって,Tの変動が海馬の記憶力低下と維持作用の主役となっているのではないか。さらに,海馬は自前でTを合成できるので,精巣で合成されるTが減少する高齢者でも,脳海馬を活性化してT合成を上げることで,認知症を食い止めることができるのではないか。ラットを用いたTの神経シナプス作用を中心に現状を説明する。

2.女性ホルモンと認知症・フレイル
亀山祐美     秋下雅弘

 アンドロゲン,女性ホルモン,男性ホルモンは,加齢に伴い低下しサルコペニアや認知機能低下(コグニティブ・フレイル),認知症発症とも関連することがわかってきた。予防としてのホルモン補充療法は大変興味深く,今後,検討していくべき命題だと思われる。本稿では,サルコペニア・フレイル・認知症と女性ホルモンの関係性について概略する。

3.甲状腺ホルモンと認知症・フレイル
松永晶子   米田 誠

 日本人の平均寿命が男女とも80歳を超える一方で,健康寿命は必ずしもそれに伴い延長してはいない。高齢者の健康寿命の延長を妨げるものとしては認知症やフレイルが注目されており,これらを早期の段階で診断し,適切な介入・支援を行うことは生活機能の維持向上や合併症の予防につながる。高齢者の認知症やフレイルを規定するホルモン因子は数多いが,甲状腺機能異常はそのなかでも重要である。甲状腺機能異常による認知症は,治療可能であるにもかかわらず,アルツハイマー病などと誤診されることがある。また,甲状腺機能異常によって心不全,運動機能低下などの身体の虚弱・脆弱(フレイル)をきたすが,高齢者では時に,単なる加齢として見過ごされる。高齢者にみられる認知症やフレイルの原因として,治療可能な甲状腺機能異常を見逃さないことが肝要である。

4.ビタミンDと認知症・フレイル
入谷 敦  小寺久美絵  奥野太寿生

 ビタミンDは骨代謝にかかわるホルモンとして発見されたが,現在,認知症およびフレイルの発症・進展に関与していることが明らかになりつつある。血中のビタミンD濃度の低下により,フレイルの有病率が上昇することが報告されている。また,脳ではアルツハイマー病,脳血管障害,パーキンソン病などの症例で早期から血中ビタミンD濃度が低下している。血中ビタミンD濃度の低下により,神経細胞・グリア細胞の神経保護的作用が減弱し,神経細胞が虚血をきたしたりアミロイド沈着などのストレスに対して脆弱になるためと考えられている。

5.インクレチンと認知症・フレイル
櫻井 孝

 インクレチン関連薬は,これまでの血糖降下薬とはまったく異なる作用機序を有し,2型糖尿病治療の中心になっている。GLP-1はインスリン分泌増強作用のみならず,膵臓β細胞の保護,グルカゴン分泌抑制,胃運動の抑制,食欲の抑制など多様な作用を有する。脳ではインクレチンは虚血性脳卒中,アルツハイマー病(AD),パーキンソン病の治療でも神経保護的に働く可能性が示されている。AD患者においてはGLP-1受容体作動薬が,脳の糖代謝を維持する可能性があると報告された。2型糖尿病の治療では脳機能を守る視点から,低血糖は可及的に避けるべきである。インクレチン関連薬は低血糖をきたしにくい薬剤であり,血糖変動を安定化する意味でも,脳機能維持に有利な薬剤である。本稿ではインクレチン関連薬の脳やフレイルに関する最近の知見をまとめた。

情報発信

◆目で見る神経病理
アルツハイマー病の病理診断基準
藤城弘樹

◆精神医学のトピックス
高齢者の精神科リエゾン
松山賢一   松本いずみ  山本泰司

◆認知症に関連する用語解説
リビング ウィル(living will) /メラトニン(melatonin)
柴田展人

◆最近のジャーナルから
Amouzougan A et al. Joint Bone Spine 2016 Sep 30. pii: S1297-319X(16)30139-7. /
Mosk CA et al. Clin Interv Aging 12: 421-430, 2017
山本泰司

◆多職種連携-衣食住を中心に
認知症患者さんの「食」と多職種連携-4
栄養指導の視点から
坂本八千代

◆認知症患者の暮らしサポート情報
家族会・患者会を訪ねて
レビー小体型認知症サポートネットワーク-第1回
長澤かほる さん

◆認知症の人の思い、家族の思い
東京都支部「認知症てれほん相談」より
認知症の人と家族の会 東京都支部

◆伝えたいこと,知ってほしいこと-母の介護を通して-第2回
アルツハイマー型認知症と診断されて
岩佐まりさん


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