認知症の最新医療

認知症の最新医療

<特集>一人暮らしで迎える認知症-超高齢社会のなかで

Vol.7 No.1 通巻24号(2017年1月)

発売:2017年1月23日

価格:800円+税



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特集
24号 Vol.7 No.1 (2017年1月)

一人暮らしで迎える認知症-超高齢社会のなかで

特集にあたって
井藤佳恵

 独居の認知症高齢者。そう聞いて,それを身近に感じる人も自分とは縁遠いことのように感じる人もいるだろうが,一人暮らしで認知症を迎えること,それは,誰にとってもそれほど縁遠いことではない。身寄りがない,あるいは生涯を未婚で過ごした者だけが,一人暮らしで認知症を迎えるわけではない。
高齢夫婦世帯でかつて介護者であった人が,配偶者を見送ったあとで困難事例化しているケースに遭遇する。“健康な介護者”であったときに,認知症を抱える配偶者を介してつながっていた支援者とのつながりは,配偶者が亡くなると同時にすべて切れてしまう。介護者であった者が,自身の認知症の始まりを自認し介護される側に役割を転換し,援助を希求すること,援助を受け入れていくことは容易ではなく,認知症高齢者をささえる医療・介護資源について知識がないわけではないにもかかわらず,いつしか困難事例ということで把握される。そのようなことは誰にでも起こりうることなのに,現状では“健康な介護者”を支える制度が著しく不足している。
「認知症の人の意思が尊重され,できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現(厚生労働省:認知症施策推進総合戦略)」に,まず何が必要なのだろう。かかわるその人その人の5年後,10年後を想像し,生じるであろう困難を予測しながら生活を支えるという視点がなければ,認知症高齢者を地域で支えることはできない。
何が起こるのか予測し,いかにかかわるのか考えていく一助として,本特集では,独居の認知症高齢者の医療相談を受ける機会が多い認知症疾患医療センターのソーシャルワーカー,配偶者を見送った元介護者のその後の生活にかかわる試みを模索されている居宅介護事業所と家族会,そして,困難化する前段階にある高齢者に対する行政の,それぞれの取り組みについて紹介いただくことにした。
ご寄稿いただいた諸先生方に深謝申し上げるとともに,本特集がお読みいただく方々の心に何かを残すことを願っています。

1.認知症疾患医療センターの視点から 
菊地ひろみ

 超高齢社会のなか,都市部では一人暮らしの高齢者や高齢者世帯が増加している。平成27年の東京都の65歳以上の一人暮らしの世帯は79万7千人であり,今後さらに増加する傾向である。松沢病院は東京都立病院唯一の精神科病院である。歴史のある精神科病院であると同時に自治体病院の役割として社会的な問題も含め,地域の医療ニーズに応えていく役割を担っている。認知症疾患医療センターとして,一人暮らしの認知症高齢者の行政など地域とのかかわり,不安のなかで生活している高齢者の現状,その後についてさまざまなケースとデータを基に見えてくるものを記した。

2.在宅介護者に隠れる養護ニーズの発見者について
-介護を終えた主たる介護者と補佐した家族への聞き取り調査より
青木伸吾

 小規模多機能型居宅介護(以下,小規模多機能)を利用して認知症のある人の介護を終えた家族には,主たる介護者(以下,主CP)と主CPを補佐した家族介護者(以下,捕CP)たちがいる。筆者は,介護初期と介護終了後に補CPが主CPの生活を案じ,どのように関心を寄せたか,複数の補CPへ聞き取る機会があった。この結果,介護開始前と介護終了後で補CPが寄せた主CPの生活への関心は,「介護期間中は主CPの生活を案じたけれど,介護が終了すると介護が始まる前の生活に戻ったので,主CPへの関心は,介護開始前と変わらない」と共通の言葉があった。この,「変わらない」という言葉より,主CPが介護を終えたことによる喪失状態や初期の認知症状など,周囲からの養護ニーズが隠されていると考えられた。この主CPの養護ニーズを明らかにできるのは,家族以外の友人や知人たちによる「関心」「気づき」であり,家族・専門職への橋渡しが行われると推察された。

3.認知症カフェの挑戦-目黒区のDカフェネットワーク
竹内弘道

 認知症カフェは「本人・家族」「医療・看護・介護職」「ソーシャルワーカー」「一般市民」など多彩な参加者により構成され,当事者家族のレスパイトを担保する。また,課題を共有し,認知症ケアの向上と地域ケアの最適化を図る。運営の中核をなすのは,認知症の介護を体験してきた人たち。自らの将来設計も図りながら,「認知症は当たり前」社会の到来に備える。昨年度の参加者数は延べ2,400人(1開催あたり30人)。65%がリピーターで,ほとんどが複数のカフェに参加している。「目黒区のDカフェ」は認知症を入り口に,新しいスタイルの共同体の構築を目指している。

4.訪問看護ステーションによる認知症高齢者相談支援(見守り支援)事業
-東京都千代田区の取り組み
杉山美香

 超高齢社会を迎え,認知症高齢者への対応は喫緊の課題である。とくに,一人暮らし高齢者や高齢者のみ世帯のへの対応など,家族からの支援やソーシャルサポートの薄い高齢者も増加しており,自治体の果たすべき役割は大きい。ここでは,自治体の認知症早期支援の取り組みの一つとして千代田区で実施している,郵送法による生活機能評価「こころとからだのすこやかチェック」回答未返送高齢者の訪問調査で,潜在的認知症ハイリスク者とされた対象者への訪問看護ステーションによる「認知症高齢者相談支援(見守り支援)事業」について述べる。

座談会

認知症の食行動を考える-食欲や体重の変化に注目する
 新井平伊  木下彩栄  降矢芳子  上杉百合江

情報発信

◆目で見る神経病理
迷走神経背側核
藤城弘樹

◆老年医学のトピックス
サルコペニア
小川純人

◆認知症に関連する用語解説
運転免許講習予備検査 /疾患(病態)修飾薬
柴田展人

◆最近のジャーナルから
Kitaguchi N et al. J Neural Transm (Vienna) 122(11): 1593-1607, 2015 /
McAdams-DeMarco MA et al. Clin J Am Soc Nephrol 10(12): 2181-2189, 2015
山本泰司

◆多職種連携-衣食住を中心に:認知症患者さんの「食」と多職種連携-2
認知症になったらまず歯科へ
菊谷 武

◆認知症患者の暮らしサポート情報
家族会・患者会を訪ねて
彩星の会-第3回
井藤佳恵

◆認知症の人の思い、家族の思い
認知症の人と運転
認知症の人と家族の会 東京都支部

相互交流

◆読者の声


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