認知症の最新医療

認知症の最新医療

<特集>プライマリ・ケアにおける認知症診療-アルツハイマー病患者を地域医療で支える時代に求められるもの

Vol.6 No.2 通巻21号(2016年4月)

発売:2016年4月22日

価格:800円+税



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特集
Vol.6 No.2 通巻21号(2016年4月)

プライマリ・ケアにおける認知症診療-アルツハイマー病患者を地域医療で支える時代に求められるもの

特集にあたって
下田健吾

 超高齢社会に突入し,認知症を有する高齢者に対する医療および介護の対策が急務となっている。認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)や2016年の診療報酬改定からみても,今後は確実に認知症患者への支援は地域包括システムに移行し,プライマリ・ケアが中心となると考えられる。私は大学病院で高齢者を中心にうつ病や認知症の診療を行っているが,認知症患者は生活習慣病など複数の疾患を有していることが多く,あまりにも細分化し,個々の検査や診療科の予約に時間のかかる大学病院よりも,プライマリ・ケア医が中心となり医療を提供したほうが患者にとって有益であり,早期発見の可能性も広がるのではないかと常々感じている。
 しかし,私がプライマリ・ケア医の立場であったらどうであろうか。多忙な診察に加えて認知症の診断・治療に時間を割くことができるか。加えて,大学病院ではルーチン化している画像や神経心理検査およびコメディカルスタッフとの連携などの制約に当初戸惑うであろう。このようなことを自問自答している時に,プライマリ・ケアの現場で認知症の患者を多く受け入れている先達と話をする機会があった。「診療にかかわっていて心配なことはない。必要な時に画像検査や入院を依頼することはあるが,基本は自らが地域包括医療の中心となって必要な医療および介護支援も考え診療を行っている」という言葉は力強く,限られた認知症患者の診断のみ行っている総合病院の医師への苦言もありがたくいただいた。地域包括システムは絵に描いた餅に過ぎないと感じられている方も多いと思われるが,認知症医療の中心は確実にプライマリ・ケアに移行している。
 本特集は,プライマリ・ケアの現場で明日から役に立つエッセンスを実臨床で活躍されている先生にご執筆いただいた。診療のコツだけでなく,現場からの強いメッセージを感じていただければ幸いである。

1.問診および病歴の取り方 
木之下 徹

 問診の目的とは,一つは診断の手がかりを得ること,いま一つは医療的な介入計画に役立てるためにある。すでにあるひととおりの身体疾患ならびに精神疾患の「問診」をそぎ落とすことから,「認知症医療の問診」の特徴がみえてくる。ここでの議論は「認知症医療の問診」の本質を求めて,その特徴の抽出,一点に着目して論考を進める。その過程で浮き上がった特徴とは,次のようなものとして結論づけられた。「認知症医療における問診」とは,本質的には医療介入に役立てるために行うものであって,その形はダイアログ(対話)にならざるを得ず,その際(その人)「に」から(その人)「と」への転回が求められるものである。

2.神経学的所見・検査
神戸泰紀

 本稿では認知症に関連した神経学的診察および血液検査,画像検査について言及する。これらは,その人の認知機能低下の原因推定を行うためという位置づけがある。チャートなどに示されている通り粛々と進める必要がある。当然それぞれの疾患や病態の特徴を知っておく必要がある。同時に原因推定の確からしさには限界があることも知る必要がある。原因疾患を,最も確からしいもの一つに決めるのと同時に,種々の疾患や病態の要素がそれぞれどの程度関与しているかを考えることが,臨床上有用な場合がある。これらの一連の診察および検査はその過程や伝え方も含めて,その人のその後の暮らしに役立つものでなければならない。

3.診断に有用な神経心理学的検査とは
沼田悠梨子

 認知症の症状や段階によって,治療やケアが変わってくることは,近年,医療関係者はもとより認知症の人のご家族も含め多くの人に知られるようになっている。鑑別のための疾患特異的な症状を捉えることはもちろん,認知症かどうかのスクリーニング,治療の効果判定,認知症の重症度を測るといった多くの場面で有用な役割を果たすのが神経心理学的検査であり,初診では欠かせない検査となっている。そこで本稿では認知症疾患の臨床現場で用いられる神経心理学的検査について述べる。

4.どこまで治療し,どのようなタイミングで専門医に紹介すべきか
鷲見幸彦

 認知症かどうか,また認知症であった場合,病型によって治療法,介護法のポイントが異なるため,まず診断が重要である。診断に自信のない医師でも,専門施設に診断治療方針を示してもらうことによって,認知症の人を支援することは可能であり,また診断力のある医師でも経過中診断に疑問が生じたり,行動・心理症状が目立ってきた場合には,専門施設を利用することによって継続的な診療が可能となる。認知症は専門医やかかりつけ医といった単一の医療資源だけで支援することは困難である。介護支援も含めた幅広い連携が治療の最も重要な基盤となる。

5.地域包括医療からみた認知症診察
内海久美子

 今後急増する高齢者,とくに認知症高齢者を在宅で支えていくために,包括ケアシステムの構築は急務の課題であり,2015年新オレンジプランが公表された。そのプランのなかでは,今後はプライマリ・ケア医が認知症の最前線で重要な役割を担うことが期待されている。まずはアルツハイマー型認知症の典型例の場合,プライマリ・ケア医が診断して治療を開始するために診断ポイントを挙げた。また認知症の行動・心理症状(BPSD)に対する薬物療法を概説する。最後に医療と介護の連携と情報共有のために,連携手帳の有用性について解説する。

情報発信

◆目で見る神経病理
オリーブ核
藤城弘樹

◆精神医学のトピックス
認知症のBPSDへの対応を通した初期集中支援
若栄徳彦  山本泰司

◆認知症に関連する用語解説
タップテスト(髄液排除試験)/久山町研究
柴田展人

◆最近のジャーナルから
Alhurani RE et al. JAMA Neurol 2016.doi: 10.1001/jamaneurol.2015.4756 /
Ye BS et al. J Alzheimers Dis 49(2): 483-491, 2015
小川純人

◆認知症患者の暮らしサポート情報
家族会・患者会を訪ねて
井藤佳恵

◆認知症の人の思い、家族の思い
ゴミ屋敷寸前-自分の家から離れられない
認知症の人と家族の会 東京都支部


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