認知症の最新医療

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<特集>アルツハイマー病とその鑑別疾患-アルツハイマー病との鑑別が重要な疾患

Vol.5 No.4 通巻19号(2015年10月)

発売:2015年10月25日

価格:800円+税



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特集
Vol.5 No.4 通巻19号(2015年10月)

アルツハイマー病とその鑑別疾患-アルツハイマー病との鑑別が重要な疾患

特集にあたって
山本泰司

 認知症の診療において重要なことは,まず臨床診断が正確になされることであろう。認知症のなかで最多を占めるアルツハイマー病(AD)といえども,認知症全体の50~60%程度であることから,残りの40%以上は非アルツハイマー病ということになる。
 そこで,本号の特集ではADとの鑑別が必要となる非アルツハイマー型認知症をテーマにして,その鑑別診断における臨床上の重要なポイントを中心にわかりやすく記述いただくこととした。
 具体的には,まずADとならんで3大認知症に含まれる血管性認知症およびレビー小体型認知症を挙げて,さらにADとの鑑別をする際に見逃しやすい疾患としては,進行性核上性麻痺/皮質基底核変性症および正常圧水頭症を選んだ。
 これら4つの疾患群とその比較のために,典型的なADを加えたうえで,国内有数の認知症診療の経験が豊かな5人の先生方にそれぞれ執筆を依頼した。ご多忙のなか,快くお引き受けいただいたことに感謝したい。
 なお,誌面の都合上,今回の特集に前頭側頭型認知症(FTD)をはじめとしたいくつかの重要な鑑別疾患が含まれていないことをご了解願いたい。本特集の内容が,読者のみなさんの知識の整理に役立つことを願っている。

1.典型例のアルツハイマー病
松山賢一  山本泰司

 典型的なアルツハイマー病(AD)の特徴をまとめた。ADは,高齢者に多く,いつの間にか発症してゆっくり進行する。最初の症状はもの忘れであり,言葉が出にくい,位置関係がわからない,時間や場所の認識が悪い,家事や買いものができない,などの症状も早期にみられる。行動・心理症状(BPSD)ではもの盗られ妄想が多い。
 心理検査では初期から近時記憶障害が目立つ。頭部MRIでは海馬を含む側頭葉内側の萎縮が特徴的である。SPECTやFDG-PETでは,後部帯状回,楔前部,頭頂側頭連合野などで集積低下がみられる。

2.レビー小体型認知症
小田陽彦

 臨床的には一見アルツハイマー病(AD)にもみえたが,注意深く診るとレビー小体型認知症(DLB)であることがわかった症例を経験したので報告する。もの忘れを主訴に来院。時計描画試験で視空間認知障害が示唆されたものの幻視の訴えがなく一見ADのようだったが経過のうちに幻視の訴えがみられはじめ,IMP-SPECTによる定性脳血流画像にて後頭葉の血流低下を認め,DLBと診断変更した。内服薬ではなく貼付薬を本人が希望したのでリバスチグミンを用いた。Mini mental state examination(MMSE)の点数は,投与開始時が24点だったところ投与46カ月時に25点だったのでリバスチグミン奏効例と考えられた。認知症の患者で視空間認知障害がみられた場合は,幻視の有無について詳細に問診する必要があるのかもしれない。

3.血管性認知症
鷲田和夫  古和久朋  戸田達史

 血管性認知症 (Vascular Dementia)は,脳血管障害に起因して生じる認知症の総称である。アルツハイマー病に比べ記憶障害は比較的軽度で, 白質障害・前頭葉機能低下に起因する実行機能障害・思考速度遅延・作業記憶障害を主に呈する。予後は不良であるがコリンエステラーゼ阻害薬やNMDA受容体拮抗薬の早期投与開始が, 病状の進行を抑制する。認知刺激療法や回想法などの非薬物療法を積極的に行うことも予後改善に寄与する。血管性認知症は認知機能低下に伴う服薬アドヒアランス低下と高血圧症などの血管危険因子管理の不良により, さらなる脳血管障害を生じるという負の連鎖に陥ることが多い。医療者はこの悪循環をできるだけ抑制するよう努力しなければならない。

4.進行性核上性麻痺/皮質基底核変性症(PSP/CBD)
下村辰雄

 進行性核上性麻痺/皮質基底核変性症(PSP/CBD)の臨床診断は近年,難しいものになっている。その理由は,SteeleらやRebeizらの原著以来定着した疾患概念が病理学的に診断確定した症例の見直しにより,再考を要する状況になったためである。PSPではさまざまな臨床亜系の存在が明らかとなっている。また,CBDの典型的な臨床症候を示す臨床診断名として皮質基底核症候群(CBS)が用いられている。

5.正常圧水頭症(NPH)
吉山顕次  数井裕光

 正常圧水頭症は,手術により治療可能な認知症であり,正しく診断され治療が行われることが重要である。特発性正常圧水頭症は,認知障害,歩行障害,排尿障害を呈し,特徴的な画像所見を示す疾患である。この認知障害は緩徐進行性であり,アルツハイマー病との鑑別が問題となる。また,画像検査上,特発性正常圧水頭症とアルツハイマー病は似た特徴があり,この点でも鑑別が問題となる。特発性正常圧水頭症とアルツハイマー病が合併する症例もあり,鑑別が容易ではないことも多く,手術適応となるかどうかを調べる髄液排除試験(タップテスト)を行うことが鑑別の助けとなることもある。

情報発信

◆目で見る神経病理
大脳皮質基底核変性症
藤城弘樹

◆精神医学のトピックス
認知症とアパシー
下田健吾

◆認知症に関連する用語解説
レスパイト/ウェルニッケ-コルサコフ症候群
柴田展人

◆最近のジャーナルから
Dauphinot V et al. J Alzheimers Dis 44(3): 907-916, 2015 /
Zahodne LB et al. Am J Geriatr Psychiatry 23(2): 130-140, 2015
小川純人

◆認知症患者の暮らしサポート情報
家族会・患者会を訪ねて
井藤佳恵

◆認知症の人の思い、家族の思い
母は若年性認知症なのでしょうか?
認知症の人と家族の会 東京都支部


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