認知症の最新医療

認知症の最新医療

<特集>ライフスタイルと認知症-
予防からのアプローチ

Vol.5 No.2 通巻17号(2015年4月)

発売:2015年4月25日

価格:800円+税



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特集
Vol.5 No.2 通巻17号(2015年4月)

ライフスタイルと認知症-予防からのアプローチ

特集にあたって
柴田 展人

 認知症の発症については、遺伝子レベルから、生活習慣、環境要因までさまざまな要素が関与しています。アルツハイマー病を例にとっても、アポリポ蛋白E4遺伝子が発症のリスクに影響を与えることはよく知られています。一方で、いわゆる後天的な要素についても多くの知見が集まっています。多くは疫学的な研究からですが、生活習慣病はもちろんのこと、これまでに性格傾向、教育歴、家族背景、運動習慣、食事、嗜好、余暇活動、睡眠などが報告されています。予防的な観点から「どうしたら、アルツハイマー病にならずに済みますか?」との問いかけに、認知症専門医でもなかなかクリアに返答するのは難しいのではないでしょうか?
 今回の企画では、いわゆる「ライフスタイル」と認知症の関連について、専門的に研究されている先生方に、それぞれのテーマで論じていただきました。各先生方には、専門的な内容を非常にわかりやすく解説していただき、さらに、実践的な内容となっています。いわゆるエビデンスとしてどこまで確立しているのか、どういう機序なのか、「予防」という側面からの認知症の理解がさらに深まると思います。
 本特集が、読者の皆様の認知症診療の一助となることを願っております。

1.疫学調査から
清原 裕

 福岡県久山町の認知症の追跡調査では、中年期から老年期までの持続喫煙は、アルツハイマー病(AD)、血管性認知症(VaD)、その他の認知症の有意な危険因子であったが、高齢者でも禁煙によりそのリスクが減少した。海外の追跡研究の成績を集めたメタ解析では、少量~中等量のアルコール摂取はADのリスクを30%、VaDのリスクを20%有意に減少させたが、多量のアルコール摂取にはその予防効果が認められなかった。久山町研究を含めたメタ解析では、運動はADおよびVaDのリスクを有意に減少させた。また、久山町の追跡調査では、野菜が豊富な日本食に牛乳・乳製品を加えた食事パターンは、ADおよびVaDの発症リスクを有意に低減させた。

2.食事と認知症
小川 純人

 これまでのさまざまな研究により、食事や栄養をはじめとするライフスタイルの要因と認知機能との間には関連性がある可能性が示されてきており、加えて高齢期における低栄養や栄養不足は、認知症患者における認知機能の低下とも関連する可能性が示唆されている。栄養に関連する指標としては、食事摂取のパターンや栄養状態の評価などが挙げられ、最近の知見からは食事内容や特定の微量栄養素と高齢者の認知機能との間に関連性が認められる可能性も明らかになりつつある。こうしたさまざまな知見や研究成果に基づき、高齢者の栄養状態評価ならびに適切な栄養介入の実施により、高齢者における認知機能低下や認知症の予防・管理につながる可能性が期待される。

3.運動と認知症
亀ヶ谷 忠彦

 運動は高齢者の認知機能低下を抑制し、認知症の発症数を減少させることが多くの疫学研究によって示されている。ウォーキングなどに代表される有酸素運動は、認知機能の改善を目指す運動プログラムの多くに取り入れられて有効性が報告されている。運動によって認知症の発症を抑制するためには定期的に一定量の運動を継続すること、すなわち運動習慣を持つことが有効である。認知症を予防する取り組みは、できるだけ早い段階で開始して長く継続することによって効果が示される。地域に在住する多くの高齢者が、認知症予防に効果が期待できる運動プログラムなどの活動に早い段階から取り組み、継続を支援するための仕組み作りが求められている。

4.アルコール摂取と認知症
松井 敏史  輪千 督高  神﨑 恒一

 アルコール飲酒と認知症発症にはJカーブの関係がある。最近の観察研究で、少量飲酒に認知症発症の低減効果が明らかになっている。しかしながら、高齢者の約15%に飲酒が関連した何らかの健康問題があり、過度の飲酒は脳萎縮性変化に加え、脳梗塞・深部白質病変に関与し認知症リスクを増大させる。また高齢者の飲酒問題は健康寿命に直結する。かつては身体的・精神的ストレスの調整弁になっていた飲酒が、退職や配偶者の死などにより無節制かつ制御不能になる。社会的活動や仕事の継続など生きがいのある生活とともにある飲酒なのか、「さびしいから」「することがないから」飲むといったライフスタイルを破綻させる飲酒なのかが高齢者の「節度ある適度な飲酒」量を決める。

5.認知症の進行予防と睡眠呼吸障害の関係
青木 浄亮  松尾 雅博  山田 尚登

 呼吸障害による睡眠の質的低下は、認知症の発症に影響するといわれているが、認知症発症後の重症度との関連はあまり知られていない。そこでわれわれは、睡眠呼吸障害と認知症重症度との関係を、111人の認知症患者において調べた。この際、すでに認知症発症要因として知られている、年齢、糖尿病、脂質異常症、高血圧も比較として含めた。この結果、既知の認知症発症要因と比較しても、睡眠中の呼吸障害が認知症の重症度と強く相関し、この関連が80歳未満の患者でとくに強くなることがわかった。以上より、睡眠中の呼吸障害の治療が、認知症進行の予防に重要であることが示唆され、さらにその対処が早期であればより効果的である可能性が示された。

情報発信

◆目で見る神経病理17
オレキシン
藤城弘樹

◆精神医学のトピックス
抗精神病薬と突然死のリスクについて
柴田 展人

◆認知症に関連する用語17
Preclinical AD(前臨床期アルツハイマー病)/糖化ストレス
柴田展人

◆最近のジャーナルから
Thorpe CT et al.Diabetes Care 2015 Jan 15. DOI: 10.2337/dc14-0599 /
Rizzo MR et al.J Gerontol A Biol Sci Med Sci 69: 1122-1131, 2014
小川 純人

◆認知症患者の暮らしサポート情報
家族会・患者会を訪ねて
井藤 佳恵

◆認知症の人の思い、家族の思い13
妻より必ず長生きするぞ!
認知症の人と家族の会 東京都支部


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