認知症の最新医療

認知症の最新医療

<特集>認知症と鑑別を要する他疾患
-治癒可能な認知機能障害を見逃さないために

Vol.5 No.1 通巻16号(2015年1月)

発売:2015年1月25日

価格:800円+税



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特集
Vol.5 No.1 通巻16号(2015年1月)

認知症と鑑別を要する他疾患-治癒可能な認知機能障害を見逃さないために

特集にあたって
小野 賢二郎

 今回,第16号の特集は,「ライフスタイルと認知症-予防からのアプローチ」です。  わが国は,超高齢社会を迎え認知症患者の数が年々増加してきており,その数は現在約462万人(2012年)となり,今後さらに増え続けると推定されています。
 われわれの日常診療においてはさまざまな疾患で認知機能低下をきたすことが知られていますが,それらはすべてがアルツハイマー病やレビー小体型認知症といった神経変性疾患だけではありません。軽度の意識障害が認知症と紛らわしいこともしばしば経験するところであり,適切な時期に適切な診断と治療を行うことができれば,症状の改善が見込まれることも少なからずあります。これらは“treatable dementia”と呼ばれ,日常診療では決して見逃してはならない疾患とされています。さらに,さまざまな認知症疾患にともなう特徴的な身体症状の把握も,患者のトータルマネージメントという観点から重要と考えられます。
 そこで本特集では,内科的疾患から脳神経外科的疾患,精神科的疾患に至るまで認知症状をきたす可能性のある身体疾患について,この分野の第一人者の先生方にわかりやすく解説していただきました。本特集で取り上げた疾患等の鑑別診断を念頭におきながら,皆様の日常診療を少しでも効果的に進めてくだされば,特集企画者として幸いに思います。

1.特発性性常圧水頭症,慢性硬膜下血腫
喜多大輔

 認知症は一般に治療困難であるが,正常圧水頭症(NPH)および慢性硬膜下血腫(CSDH)を原因とするものでは,脳神経外科手術による改善が見込まれる。NPHは歩行障害,認知症,尿失禁を三主徴とし,画像にて脳室拡大を認める。とくに高齢者に発症する特発性正常圧水頭症(iNPH)は,「シルビウス裂の開大と円蓋部脳溝狭小化」という特徴的なMRI所見を示すことが明らかとなり,この画像所見を基に近年,診断・治療の基礎となる「iNPH特発性正常圧水頭症診療ガイドライン」が策定された。CSDHは軽微な頭部外傷を契機とし,数日~数カ月を経て硬膜下に被膜をともなった流動性の血腫が貯留し,神経所見を呈する病態である。これまで脳萎縮のある高齢者に多いとされてきたが,抗血栓療法を受けている患者におけるCSDHの発症が注目されており,今後も診察の機会が増えることが予想される。

2.神経感染症(脳炎等)
中里良彦

 亜急性~慢性に進行する脳炎・髄膜炎では,認知症など高次機能障害が主症状となることがある。ほかに脳局所症状を認めない場合には,アルツハイマー病などの変性性認知症との鑑別を要する。ヘルペス脳炎は初期治療の遅れが予後を悪化させるため本症を疑ったら,躊躇なく髄液検査,MRI検査を行い,早期に治療を開始するべきである。亜急性髄膜炎は,微熱や軽度の炎症所見を見逃さないことが重要である。自己免疫性介在性脳炎・脳症は腫瘍に随伴して生じる(傍腫瘍性辺縁系脳炎)ことがある。橋本脳症はMRI異常を認めにくく,抗NAE(NH2-terminal of alpha-enolase)抗体が診断に有用である。プリオン病は認知症の進行が速く,週単位で病状が進展する。MRI拡散強調画像(diffusion- weighed image: DWI)で大脳皮質に高信号を認める。

3.甲状腺機能低下症
廣西昌也

 甲状腺機能低下症はミオパチー,ニューロパチー,小脳失調,精神障害,認知機能障害など多彩な神経症状をきたす可能性がある。甲状腺機能低下症における無気力,易疲労感,動作緩慢,嗜眠,記憶力低下などの症状は,アルツハイマー病やレビー小体型認知症などにおいても認められ,症状や身体所見のみで鑑別することは困難な場合も多い。認知症の日常診療において,治療可能な認知機能障害(いわゆるtreatable dementia)の鑑別は大変重要であるが,なかでも甲状腺機能低下症は有病率が高く,認知症の鑑別において常に可能性を考え,認知症を疑った患者には,甲状腺機能のスクリーニング検査を積極的に行うことが推奨される。

4.ビタミン欠乏症(ウェルニッケ脳症等)
織田雅也 和泉唯信

 高齢者においては,加齢にともない,食習慣の変化や,摂食に関する能力の低下,吸収・代謝などの生理的機能の変化などにより,種々の栄養障害を生じうる。ビタミンB1,ビタミンB12,葉酸の欠乏は認知機能障害の原因となりうる。いずれの欠乏においても,認知機能障害単独ではなく,ほかの神経症候をともなうことのほうが多いが,とくに高齢者においては,非定型的に認知機能・精神機能の障害が前景に立つことがありうることを念頭に置き,欠乏症が疑わしい場合は積極的に測定を行い,また,補充による治療的診断を試みることも考慮する。

5.うつ病
北村 立

 認知症と鑑別すべき病態として,うつ病性仮性認知症がある。仮性認知症は可逆的で治療可能であり,うつ病の寛解とともに認知機能も回復するといわれている。しかし実際には軽度の認知機能障害が残存したり,数年かかって認知症に移行するようなケースが多いので,認知症の有無にかかわらずうつ病の治療を行い,その後の経過を注意深く観察する必要がある。また,高齢者うつ病はレビー小体型認知症(DLB)に合併することが多い。DLBでは向精神薬に対する過敏性を認めるので,高齢者うつ病の治療時には注意が必要である。

<症例報告>
小林 中

 リバスチグミンがクリクトン高齢者行動評価尺度とZarit介護負担尺度を改善した高齢者アルツハイマー病の2例

情報発信

◆目で見る神経病理16
海馬
藤城弘樹

◆地域保健のトピックス
地域における困難事例から-老年期の妄想あるいは物語を紡ぐということ
井藤佳恵

◆認知症に関連する用語16
オレンジプラン/Zarit介護負担尺度
柴田展人

◆最近のジャーナルから
Pitkala KH et al.JAMA Intern Med 173(10): 894-901, 2013 /
Aguiar P et al: Curr Alzheimer Res 11(6): 532-537, 2014
山本泰司

◆臨床に役立つ情報
高齢者のすまい④
井藤佳恵

◆認知症の人の思い、家族の思い12
母の介護生活も12年になり,もう限界
認知症の人と家族の会 東京都支部


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