認知症の最新医療

認知症の最新医療

<特集>認知症の終末期をめぐって-その人らしい“しめくくり”とは

Vol.4 No.1 通巻12号(2014年1月)

発売:2014年1月25日

価格:800円+税



  • 本誌概要
  • 最新号のご案内
  • 創刊メッセージ
  • バックナンバー
  • トピックス・連載
  • 広告掲載料金・投稿規定

特集
Vol.4 No.1 通巻12号(2014年1月)

認知症の終末期をめぐって-その人らしい“しめくくり”とは

特集にあたって
井藤佳恵

 子どものない夫婦の一方が認知症になり,一方が介護者になる。めずらしいことではないだろう。さまざまな理由で,子をもたない人生があるのだから。数年のつきあいになるそのご夫婦もそうだった。頼れる兄弟もない。夫の認知症が進行してきて,どこでどのように人生をしめくくるのか,そんな話をするようになった。  「私たち夫婦は子どもがないので,主人が認知症だとわかった頃に,ふたりでエンドノートをつくりました。最近やっと,主人のエンドノートを開く気持ちになりました。すでに認知症になっていた主人が,一生懸命にたくさんたくさん書いた文章が残っていました。なるべく薬は飲まず,そして私にあまり負担をかけないよう,施設で静かな最期を過ごしたいと書いてありました。なのに今,主人は何種類もの薬を飲み,私は仕事を辞め,健康な介護者を誰が助けてくれるのかという思いを抱えて,たくさん泣いたし,たくさん怒鳴りました。そういう時期が過ぎ,やっと,主人がこれまで私にくれた時間に感謝をする気持ちになれました。先月やっと,ショートステイを使う気持ちを決めたばかりです。主人の最期は私が悩みながら決めていきます,ですが,私の最期は誰が考えてくれるのでしょうか。私のエンドノートを読んでくださる方は,多分,いないと覚悟しています。だけど確実に,私も老いてきて,そういう時はもう遠くはないと思っています。」  それが前回の診察時の会話だった。  その人らしい人生の“しめくくり”は,誰のものなのだろう,そして誰が決めるのだろう。私は今,その答えをもたない,考えていくために知らないことも多すぎる。そのような思いから今回の特集企画を組ませていただき,それぞれの場所で人生の“しめくくり”について考えていらっしゃる先生方にご寄稿いただいた。  ご寄稿くださった先生方に深謝申し上げるとともに,この特集をお読みいただく方たちのこころに何かが刻まれることを願っています。

1.病院のなかで
桑田美代子

 認知症はいずれ死に至る病である。そう考えた場合,病院であっても死を見据えたケアが必要となる。医療機関である病院だからこそ苦痛を緩和する医療,それに加え,日々丁寧に繰り返されるケアが尊厳の保持につながる。そのなかで,ケアの主体は本人であること,家族の調整も忘れてはならない。そして何よりも,その人らしい“しめくくり”に最も影響を与えるのは,ケアする私たちの態度であることを再確認する必要がある。

2.施設のなかで
島田千穂

 施設で最期を迎える高齢者は増加傾向にある。認知症の高齢者が最期を迎えるまでのプロセスは,慢性疾患の進行と重なりつつ進むため,終末期ケアの目標設定のタイミングや施設職員・家族間での目標共有が難しい。本人の機能に合わせた食事介助技術,体位による排痰を促す技術など,施設における終末期ケアの介護技術は,発展可能性が大きい。

3.在宅で
三浦正悦

 認知症の緩和ケアでは,人生の“しめくくり”をどうしたいのか本人の意思はなかなか引き出せないことが多い。認知症を持ちながら,自宅で一人暮らしをしていた80代のIさんが終末期の状態になった。腹痛は医療用麻薬で,神経障害性疼痛はプレガバリンでコントロールした。介護保険や医療保険での介入ではその人らしい暮らしができなくなり,コニュニティ緩和ケアを目的に,緩和ケアコーディネーターを介入させた。同年代の“おっぴさんクラブ”を紹介,自宅で飛び出せお茶会を開催したり,Iさんのつぶやきから“緩和ケアプロジェクト”を展開し,毎回笑顔のあふれる時間となった。グループホームに入居後約1カ月半で旅立たれた。コミュニティ緩和ケアは魂と魂の繋がりを大切にする“魂に導かれるケア”ではないかと思う。

4.身寄りのない人たち
滝脇 憲

 2009年に群馬県で起きた「静養ホームたまゆら」火災は,単身,困窮,高齢要介護に加え,認知症などの障害やがんを抱える人の地域居住が困難であることを明らかにした。筆者が所属する「ふるさとの会」は,生活困窮者・生活保護受給者を中心に,都内で1,263名の利用者を支援している。2011年以降,末期がんの5人を看取ったが,「地域で孤立せず最期まで」を支えるのは互助である。互助づくりに向かって住まいの確保と生活支援を行い,,地域包括ケアシステムにはめ込む。このような「支援付き住宅」の制度化が必要である。生活支援の仕組みをつくることは,若年困窮者の雇用の場になるなど,多世代間の互助,若者の自立支援,コミュニティづくりを促進する。

5.認知症患者への延命治療の決定権問題一考
山田祐司

 終末期医療の決定プロセスにおいて,最も尊重されなければならないのは,もちろん患者本人の意思である。しかし,終末期を迎えた認知症高齢者の数が激増する一方で,本人の意思がはっきりしない場合,重大な治療についての代諾権が誰に帰属するのかという点の法的整備がなされていない。このままでは,ともすれば,本人の意思や尊厳を重視しない家族や医的侵襲の当事者(医療関係者)の判断だけで本人の最期が左右されかねない。  この点の立法的解決を待つとともに,関係者ができる限り早い段階から,現状の制度のなかで人生のしめくくりかたについての本人の意向を推定する方策を探る努力をすべきである。

情報発信

◆目で見る神経病理12
黒質線条体変性
藤城弘樹

◆老年医学のトピックス
高齢者に対する適切な医療提供の指針
秋下雅弘

◆認知症に関連する用語12
ロコモティブシンドローム/辺縁系脳炎
柴田展人

◆最近のジャーナルから4
Zahodne LB et al. Am J Geriatr Psychiatry. 2013 Jul 17. [Epub ahead of print] /
Cumbo E et al. J Alzheimers Dis. 2013 Oct 28. [Epub ahead of print] 
監修 山本泰司

◆臨床に役立つ連絡先12
地域福祉権利擁護事業⑥(日常生活自立支援事業)
監修 井藤佳恵

◆認知症の人の思い,家族の思い8
認知症と告知された人の思い-後編
認知症の人と家族の会 東京都支部


上へ