認知症の最新医療

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<特集>アルツハイマー病の根本的治療薬最前線-治療薬開発はどこまで進んできているのか

Vol.3,No.3 通巻10号(2013年7月)

発売:2013年7月25日

価格:800円+税



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特集
Vol.3,No.3 通巻10号(2013年7月)

アルツハイマー病の根本的治療薬最前線-治療薬開発はどこまで進んできているのか

特集にあたって
小野 賢二郎

今回、第10号の特集は、「アルツハイマー病の根本的治療薬最前線」である。
 長寿大国となった本国では老年期の認知症の罹患率が急激に増加し、なかでもアルツハイマー病(AD)は罹患率が高く、極めて重要な研究課題となっている。
 基礎レベルでの病態研究の進歩とともに、ADの根本的治療法(disease-modifying therapy:DMT)の可能性が現実味を帯びてきており、実際に臨床治験も進みつつある。
 しかし、これまで有力視されているアミロイド仮説に基づき、アミロイドβ蛋白(Aβ)の産生抑制(セクレターゼ阻害・修飾)薬、凝集抑制薬や免疫療法ではいまのところ、アミロイドは減少させることはできるものの認知症の進行を抑制する決定打はまだ出ていないのが現状である。そのようななかでAβオリゴマー、タウ蛋白、さらにはiPS細胞も含めて幅広いアプローチで根本治療薬開発研究が進められている。
 このようなAD診療、研究の流れにおいて、今回の特集でいま一度、根本治療薬開発の現状を整理したいと考えた。幸運にもそれぞれの分野で世界最先端の診療・研究をされている先生方に承諾を得ることができた。また、本号の神経内科トピックスは、近年、発表された新しいアルツハイマー病の診断基準に関して解説していただくことができた。
 この充実した内容の特集号を読まれた医師、研究者やコメディカルの方々が、さらに高い目標をもってADの診療および研究を進めていただけたら企画側としては、このうえない喜びである。

1.アミロイドβ蛋白(Aβ)

1)セクレターゼ活性制御薬の開発
富田泰輔

患者脳の解析に始まり、遺伝学・生化学、そして近年の大規模臨床観察研究の成果から、アミロイドβ蛋白(amyloid-β peptide: Aβ)はアルツハイマー病(Alzheimer disease: AD)の発症に深く関与することが示されつつある。β、γセクレターゼは、それぞれAβの産生量および凝集性を決定する酵素である。そのためセクレターゼ活性制御による脳内Aβ量の制御は、発症機序に基づいたdisease-modifying therapy(疾患修飾療法)となることが期待され、重要な創薬標的分子と考えられてきた。近年特異的なセクレターゼ活性制御化合物が治療薬候補として開発され始め、その問題点も徐々に明らかとなりつつある。本稿においては、セクレターゼ活性制御法の開発における最近の知見を述べる。

2)Aβ免疫療法の開発
松原悦朗

Aβ免疫療法、なかでも受動免疫療法(いわゆる抗体療法)はアルツハイマー病(AD)の疾患修飾薬(根本治療薬)として期待されており、その開発の現状を整理する。

3)Aβ凝集制御薬の開発
小野賢二郎  山田正仁

アルツハイマー病(AD)では、凝集したアミロイドβ蛋白(Aβ)が脳に沈着して神経機能が障害されるが、特に早期凝集段階であるオリゴマーが治療薬の重要なターゲットとなっている。現在、Aβ凝集制御のAD治療における有用性は確立していないが、Aβ凝集制御薬として、in vitroだけでなく、in vivo実験系、さらには臨床試験においても有意な効果を有する化合物が報告されてきており、今後のAD治療において重要な位置を占める可能性がある。

2.タウ凝集制御薬の開発
吉池裕二

Aβ(βアミロイド)を標的としたアルツハイマー病(AD)の治療薬開発は予防へ舵を切ろうとしている。そんななかAβとは異なる視点から治療薬開発が活発になりつつある。その一つがタウの凝集阻害である。凝集したタウはADの病理学的特徴の一つ神経原線維変化の主成分であることなどから、タウ凝集の抑制がAD治療につながると考えられている。ここでは、タウ凝集を標的とした治療薬開発の現状とそれに関連した筆者自身の研究をあわせて述べる。

3.iPS細胞技術を用いたアルツハイマー病の新たな医療開発
近藤孝之  井上治久

アルツハイマー病(AD)の病態として、線維状アミロイドβ蛋白(Aβ)が神経細胞外に老人斑として蓄積し、リン酸化タウの蓄積と神経細胞死に至るアミロイドカスケード仮説が広く支持されてきた。しかしワクチン療法により老人斑が除去できても、認知機能改善には至らず、AD病態の多くは未解明のままである。一方で可溶性Aβオリゴマーは、高い神経毒性を有することが知られている。我々は、アミロイド前駆体蛋白APPにE693delta変異を有する家族性AD患者からiPS細胞を作製し、大脳皮質神経細胞に分化誘導させた。すると細胞内にAβオリゴマーが蓄積し、小胞体および酸化ストレスを介して細胞脆弱性を呈した。この脆弱性は低濃度のドコサヘキサエン酸で改善された。さらにAPP E693delta変異がない一部の孤発性AD患者iPS細胞由来の神経細胞内でもAβオリゴマーが蓄積し、細胞ストレスが生じていることを明らかにした。これらの結果は、高齢発症のADにおいてもiPS細胞を用いた疾患再現が可能であり、孤発性ADに潜む病態を弁別し、病態特性に応じた創薬へとつなげる先制医療の可能性を示している。

情報発信

◆神経内科学のトピックス
新しいアルツハイマー病の診断基準に基づくアルツハイマー病の診断
佐村木美晴  小野賢二郎  山田正仁

◆目で見る神経病理10
心臓交感神経
藤城弘樹

◆病名に名を残した医学者9
アルフォンス・マリア・ヤコブ
新井平伊

◆認知症に関連する用語10
Hoehn-Yahr分類(ヤール分類)/脳由来神経栄養因子(BDNF)
柴田展人

◆最近のジャーナルから2<新連載>
Nagata K et al. J Neurol Sci 322: 87-91, 2012 /
Ballard C et al. Curr Med Res Opin 24(9): 2561-2574, 2008
山本泰司

◆臨床に役立つ連絡先9
地域福祉権利擁護事業4(日常生活自立支援事業)
井藤佳恵

◆認知症の人の思い,家族の思い6
受入れがたいご本人の声-後編
認知症の人と家族の会 東京都支部


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