認知症の最新医療

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<特集>高血圧と認知症-高血圧治療薬で認知症を防げるか

Vol.3,No1 通巻8号(2013年1月)

発売:2013年1月25日

価格:800円+税



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特集
Vol.3,No.1 通巻8号(2013年1月)

高血圧と認知症-高血圧治療薬で認知症を防げるか

特集にあたって
秋下 雅弘

高血圧は、塩分摂取の多いわが国では、60歳以上の6割、70歳以上の7割が罹患するというvery common diseaseである。したがって、認知症に高血圧を合併する割合は高いが、単純に高血圧が多い結果でもない。何故ならば、血管性認知症は高血圧を最大の危険因子とする脳血管障害に起因する疾患であり、少なくとも中年期発症の高血圧はアルツハイマー病の危険因子にもなるとされるからである。  このような高血圧と認知症の関係を考えた場合、解決すべき疑問が大きく分けて二つある。一つは、高血圧の治療や予防により認知症やその進行が予防可能かどうか。可能だとすればどのような薬剤やアプローチが最も有効か。もう一つは、認知症患者に合併する高血圧管理を、降圧目標や服薬管理も含めてどうしたらよいか。  以上の疑問に答えるべく今回の特集は企画された。認知症予防では、疫学研究にみる高血圧と認知症発症の関連、介入試験から示唆される降圧療法の認知症予防効果、そして基礎研究から期待されるレニン・アンジオテンシン系抑制薬の効果について。認知症患者の血圧管理では、血圧変動の話題と服薬管理の工夫について。結局、疑問に対する明確な解答はまだ出ていないようであるが、それだけに今後の研究の進展が楽しみな領域である。5編いずれも最新の内容をコンパクトにまとめていただいたので、短時間に現状把握するには丁度よい読みものと思われる。

1.高血圧は認知症発症リスクとなるか-疫学研究の知見
二宮利治  清原 裕

海外の疫学研究の成績では、老年期高血圧がアルツハイマー病(AD)の発症に関与する可能性は低く、脳血管性認知症(VaD)に対する影響も未だに結論が出ていない。一方、中年期高血圧がVaDの発症リスクを高めることが報告されている。福岡県久山町の追跡調査では、老年期高血圧のみならず、中年期高血圧はVaD発症の有意な危険因子であったが、AD発症とは関係しなかった。日本人に多いVaDの予防には、中年期からの適正な血圧管理が重要といえよう。

2.降圧療法は認知症予防効果があるか-介入試験の知見
大石  充  楽木宏実

認知症発症や認知機能を一次エンドポイントとした降圧薬介入試験はないが、サブ解析や後付け解析では、実薬群で認知機能低下を抑制する可能性を示唆するエビデンスが散見される。また、HYVET-COGで80歳以上の高齢者の認知症発症予防効果を検討した。認知機能低下を抑制する傾向は認められるものの有意差を得るには至らなかったが、メタ解析により実薬群で認知症発症抑制効果が認められた。今後は認知症発症を一次エンドポイントとした介入試験が待たれる。

3.レニン・アンジオテンシン系とアルツハイマー病-基礎研究の知見
茂木正樹  堀内正嗣

血圧を調整するホルモンであるレニン・アンジオテンシン系(RAS)が、アルツハイマー病に関与する可能性が注目されている。RASを抑制する降圧薬、特にアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)服用者では、アルツハイマー病の発症が少ないことや、認知症患者の施設入所を遅らせたり、死亡率を低下させたりする可能性があると報告されている。また、本来アルツハイマー病は死亡後の脳組織の染色により確診されるが、剖検患者のデータを用いた検討でも、ARBの服用者は、アルツハイマー病の脳組織変化が少ない傾向にあると報告されている。メカニズムは不明であるが、血管障害による神経機能の低下の予防や、アミロイドβの代謝や排泄への影響などが考えられている。

4.認知症患者の血圧管理

1)降圧目標と血圧変動
飯島勝矢

ラクナ梗塞や白質病変を中心とした脳血管性認知症に加え、アルツハイマー病においても血管性危険因子の関与も注目されているため、脳循環維持を念頭に置いた高血圧を主とする血管性危険因子に対する治療戦略は必要不可欠である。そこに、単なる外来血圧データによる管理ではなく、日内変動や日間変動にも意識し、24時間自由行動下血圧測定や家庭血圧測定を積極的に日常診療に導入した上で、動脈壁硬化を基盤とする過度な血圧変動にも配慮していく必要がある。

2)服薬管理上の工夫
櫻井博文  羽生春夫

高齢者高血圧症に合併する認知症は、高血圧治療薬の管理を不十分にさせ、高血圧症の治療経過を悪化させる要因となる。早期の認知症患者は病識に乏しく、かかりつけ医も気付かずに見逃されやすいので、日頃から服薬状況を確認することが大切である。対策として服薬数を少なく、服用法の簡便化、一包化調剤の指示などの工夫が重要である。

情報発信

◆精神医学のトピックス
高齢者への認知機能に対するベンゾジアゼピン系薬剤の影響
山本 泰司

◆目で見る神経病理8
アミロイドアンギオパチー
藤城弘樹

◆病名に名を残した医学者7
ジョン・ラングドン・ハイドン・ダウン
新井平伊

◆認知症に関連する用語8
コタール症候群 / IADL
柴田展人

◆臨床に役立つ連絡先8
地域福祉権利擁護事業②(日常生活自立支援事業)
井藤佳恵

◆認知症の人の思い,家族の思い4
言葉より心に寄り添う認知症
認知症の人と家族の会 東京都支部


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