認知症の最新医療

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<特集>認知症の非薬物療法の現状と課題-様々な非薬物療法をどう考えていくべきか

Vol.2,No.4 通巻7号(2012年10月)

発売:2012年10月25日

価格:800円+税



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特集
Vol.2,No.4 通巻7号(2012年10月)

認知症の非薬物療法の現状と課題-様々な非薬物療法をどう考えていくべきか

特集にあたって
山本 泰司

 高齢化社会のわが国において、現在305万人以上(世界では2,000万人以上)の人々が認知症に罹患しており、今後2035~2040年頃には400万人余りまで増加すると予想されている。  一方、アルツハイマー病(AD)患者の最初の症例報告(1906年)から長らく認知症治療薬のない時代が続いたが、ようやく1990年代後半になって最初のAD治療薬であるドネペジルが上市された。さらに、海外に数年遅れて2011年には3種類の新たなAD治療薬が加わり、現在計4種類の薬剤を使い分けることのできる時代となった。  しかし、現在のAD治療薬の臨床効果が限定的であること(例:その度合い、治療効果の持続期間、ノンレスポンダーの存在など)も指摘されていることは事実であり、今後アミロイド関連の治療薬をはじめとする新たな作用機序の治療薬の開発が期待されているところである。  他方、現在の薬物療法の有効性の限界もあり、以前から認知症の「非薬物療法」というもう一つの治療法の選択肢への期待と関心も向けられている。その中には、回想療法、音楽療法、作業療法、サプリメント(ブレインフード)の摂取などが含まれるが、これらの治療効果がエビデンスに基づいた治療法(EBM)であるかに関しては、様々な議論が繰り返されている。  そこで、第7号の企画として今回の特集テーマを掲げて、全国から認知症の非薬物療法に関する各分野のスペシャリストにご執筆をお願いした次第である。  本号の特集が、「認知症の非薬物療法にはどのような種類があって、どのくらい効くの?」という素朴な問いをはじめとして、読者の疑問を解決する一助になれば幸いである。

1.非薬物療法とそのエビデンス-総論的に
荻原 朋美  鷲塚 伸介

認知症患者への非薬物療法は、薬物以外の治療的なアプローチすべてを含む。非薬物療法の本質は、人が人にかかわることにあり、認知症の患者本人と家族、周辺の人々が穏やかに生活を送れるように支援することが重要である。認知症の非薬物療法には、リアリティ・オリエンテーション(RO)、回想法、バリデーション療法(VT)、認知刺激療法などが含まれる。また、認知症患者本人だけでなく、家族に対する介入も重要である。非薬物療法では、ランダム化比較試験による介入報告は少なく、研究手法の多様さから、メタ解析によるエビデンスを示しにくい。認知症疾患治療ガイドラインでは、回想法、認知刺激療法などが推奨されている。

2.最近注目されている非薬物療法

1)回想法の現状と課題
奥村由美子

回想法は感情に焦点をあてたアプローチで、認知症高齢者への有用な方法として広く取り組まれている。実践においては、対象者の能力に適するとともに、楽しみや心地よさが感じられることやその人らしさを発揮できることが考慮されるべきである。回想法は主にアルツハイマー病(AD)や血管性認知症(VaD)の高齢者への導入が可能で、情動機能や社会的交流を中心とする行動面での改善等が期待できる。さらには、実施形式や評価方法など、様々な側面から有効性が実証されていく必要がある。

2)リアリティ・オリエンテーションの現状と課題
山根 寛

リアリティ・オリエンテーション(RO)は、主に見当識障害がある認知症高齢者を対象に行われる行動修正法と環境療法の原理を組み合わせた治療療法である。臨床的には、対象者同士やスタッフとのコミュニケーションの深まり、スタッフの対象者に対する理解の深まりと関与度の増加、対応の質の向上などにより、援助関係が向上し日常生活における混乱が減少するといった効果が期待できる。

3)アートセラピーの現状と課題-臨床美術の認知症への適用
宇野 正威  鍋島 次雄  西田 清子

認知症の人たちの心理的 well-being を高めるための美術活動について述べる。この活動は、誰もが美術を楽しみながら創造活動ができるとの観点から、美術専門家が開発した美術教育理論に基づいている。この活動を通じ彼らが作品の中にどのように気持ちを込め、それがWell-beingにどのように寄与するかを考察する。

4)タッチケア(タクティールケア)の現状と課題
鈴木みずえ

“触れる”ことは、人と人の絆を深めあう基本的なコミュニケーション方法として大きな意義がある。特にタクティールケアは皮膚をやわらかく撫でるように一定の法則により触れるタッチとマッサージの中間的な位置づけにあるケア方法で、最近、保健・医療・福祉の現場で様々に活用されようになった。著者はタクティールケアを認知症高齢者に実践することによって、知的機能、感情機能を維持させ、攻撃性を緩和させたことを報告した。人と人との温かな手と手のふれあいによるタクティールケアは、高齢者の孤独感や不安感を受け止める非言語的なコミュニケーション方法としても活用できる可能性は高い。

5)アロマセラピーの現状と課題
中原 淑恵  浦上 克哉

老年期の変性性認知症であるアルツハイマー型認知症(Alzheimer’s disease:AD)やレビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies:DLB)は、中核症状である認知機能障害が認められる以前に嗅覚機能の低下が指摘されている。認知症患者における認知機能低下の予防や認知機能、精神症状の改善にアロマセラピーによる嗅覚刺激は有用であると考えられる。

6)ブレインフードの現状と課題-認知症予防効果について
木村 武実

ブレインフードには、イチョウ葉、ドコサヘキサエン酸(DHA)、フェルラ酸・ガーデンアンゼリカ抽出物(FG)などがあり、認知症の予防効果が議論されてきた。これまでの臨床研究によると、イチョウ葉はその効果が否定的であり、ドコサヘキサエン酸の効果も明らかではなく、前立腺癌のリスクを伴う。フェルラ酸・ガーデンアンゼリカ抽出物はアルツハイマー病の進行抑制効果が示されているが、筆者の軽度認知障害での研究では、認知症予防の可能性も期待できる。

情報発信

◆地域保健のトピックス
 認知症と睡眠障害
下田 健吾

◆目で見る神経病理7
房状アストロサイト
藤城弘樹

◆病名に名を残した医学者6
ジョージ・ハムナー・ハンチントン
新井平伊

◆認知症に関連する用語7
特発性正常圧水頭症 (iNPH) / グルタミン酸
柴田展人

◆臨床に役立つ連絡先7
地域福祉権利擁護事業(日常生活自立支援事業)
井藤佳恵

◆認知症の人の思い,家族の思い3
受診に至るまでの家族の思い-後編
  認知症の人と家族の会 東京都支部


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