認知症の最新医療

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<特集>期待されるアルツハイマー病の新治療薬

Vol.1,No2 通巻2号(2011年7月)

発売:2011年7月25日

価格:800円+税



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特集
Vol.1,No.2 通巻2号(2011年7月)

期待されるアルツハイマー病の新治療薬

特集にあたって
秋下雅弘

今回、第2号の特集は、待ちに待ったアルツハイマー病の新治療薬3剤が日本でも処方できるようになったことを受けて企画された。発行時には3剤とも発売されているはずであり、タイムリーであることは間違いない。
 これまでドネペジル塩酸塩だけであったアルツハイマー病治療薬の選択肢が一挙に広がったわけで、医師・患者双方にとって大変な朗報である。ただ、先進諸外国では4剤ともすでに承認されていたわけで、超高齢社会を迎え100万人超のアルツハイマー病患者を抱えるにもかかわらず、新薬開発の道のりの険しいわが国の状況を物語る。このあたりの事情を理解いただくために、新薬開発に至る経緯を最初に、そして今後の展望を最後に解説いただいた。
 一方で、治療薬の選択肢が広がったことで、各薬剤の使い分けをどう考えればよいのか、患者・家族からの新薬に関する質問に対してどう答えればよいのか、といった疑問が当然出てくる。そこで新薬3剤の薬理作用、臨床効果、特徴について、他の薬剤との違いが明らかになるように解説いただいた。
 本特集には、認知症専門医にとっても、知っているようで知らなかった内容やデータが盛り込まれている。また、いずれの文章もわかりやすく書かれており、これから認知症診療を始めてみようかという医師にも、あるいは認知症患者に関わるコメディカルにも有用な情報源となることを確信している。どうか、今すぐに読んで明日からの診療に役立てていただきたい。

1.オーバービュー:アルツハイマー病治療薬の現状と新薬開発の経緯
山本 泰司

1999年にわが国において初めてのアルツハイマー病治療薬(ドネペジル塩酸塩)が発売されてから12年余りが経過した。そして、最近3種類の新しいアルツハイマー病治療薬が相次いで販売承認された。本稿では、現在までのアルツハイマー病治療薬の開発の経緯について概説する。なお、新薬として承認された3種類の薬剤の詳細については、本号の他稿に述べられているので参照いただきたい。これらの薬剤はいずれもアルツハイマー病の根本治療薬ではないものの、今後アルツハイマー病の根本治療薬開発への足掛かりとなっていくものと思われる。

2.リバスチグミン
北村  伸

リバスチグミンは、アセチルコリンエステラーゼとブチリルコリンエステラーゼを阻害する二重の作用により、シナプス間隙でのアセチルコリン濃度を高めて神経伝達が促進される薬剤である。アルツハイマー病患者の認知機能と全般臨床症状の改善効果が示されている。パッチ剤の特徴として、副作用である消化器症状の軽減が示されている。そして服薬管理の負担軽減が期待されている。

3.ガランタミン
繁田 雅弘

ガランタミンは、ニコチン受容体 (nAChR) に直接結合し受容体の感受性を高める薬理作用を併せ持つアセチルコリンエステラーゼ阻害薬である。ガランタミンの海外での特徴的な臨床試験の結果として、脳血管障害を伴うアルツハイマー病(AD)に有効であったとの報告がある。また、周辺症状に対する特性についてプラセボを対照とした試験のポストホック解析により、興奮、不安、脱抑制、異常行動に対して有意な効果が示されている。長期間投与によるPETを用いたヒトを対象とした検討からも、nAChRの密度の変化がなく、耐性が生じにくく長期間にわたる臨床効果が期待されている。

4.メマンチン
浦上 克哉

アルツハイマー病(AD)は長期にわたって症状の進行をいかに抑制するかが重要であるが、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)阻害薬およびN-メチル-D-アスパラギン酸(N-methyl-D-aspartate; NMDA)受容体拮抗薬はともに1年以上の長期投与試験において有用性を示しており、認知機能障害の進行を抑制し続けることが期待される。また、より早期からAD治療薬の投与を開始することで、長期にわたって認知機能を高く維持できる可能性がある。さらに、AD治療薬の長期投与により認知機能障害の進行が抑制されれば、介護者の負担を軽減させ、施設入所を遅らせる可能性があることから、医療費の削減にもつながるものと考えられる。AChE阻害薬の3剤において、リバスチグミンはAChEよりもブチルコリンエステラーゼ(BuChE)に、ドネペジルおよびガランタミンはAChEに選択的に作用し、ドネペジルではガランタミンよりAChE阻害作用が強いとの報告がある。AChE阻害薬の長期投与により、長期にわたって強くAChEが阻害されるとAChEが誘導されることから、AChE阻害薬の休薬により病態が増悪する可能性がある。また、ガランタミンはAChE阻害作用のみならずnAChRへのAPL作用を有している。これらの点も考慮して薬剤を選択する必要がある。本稿で紹介するメマンチンは世界で唯一のNMDA拮抗を作用機序とするAD治療薬であり、わが国のAD治療に貢献することを期待している。

5.アルツハイマー病治療薬の今後の展望-開発中の新薬について
柴田 展人

脳組織に異常に凝集、沈着したアミロイドが、主なアルツハイマー病の病態と考えられている(アミロイドカスケード仮説)。アミロイド免疫療法は脳組織に沈着するアミロイドを免疫反応により減少させ、その後の神経細胞変性を生じにくくさせる。当初開発されたワクチンでは脳髄膜炎が合併したが、脳組織からアミロイドの減少が確認されている。現在Bapineuzumab(AAB-001: ファイザー社)を中心に、より安全なアミロイド免疫療法が第Ⅲ相臨床試験に入っている。一方、アミロイドの凝集を抑制する機序で、γセクレターゼ阻害剤も治験が行われている。Notchと呼ばれる蛋白への影響から、有害事象の発生が報告されており、それらをコントロールできる選択的γセクレターゼ阻害剤、γセクレターゼモジュレーターに注目が集まっている。

情報発信

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初老期の"高機能広汎性発達障害"
長谷川 典子 山本 泰司

◆目で見る神経病理2
神経原線維変化
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