認知症ハンドブック① 認知症の診断<改訂版>
―アルツハイマライゼーションと時計描画検査

著者:河野和彦(名古屋フォレストクリニック院長)

定価:2,500円+税 A5判/162頁
ISBN978-4-86270-029-2

 

「アルツハイマー型認知症はこうして見抜く!」。アルツハイマライゼーション(初期認知症の兆候)と、時計描画検査(米国の医学会が重要視する簡易認知症検査法のひとつ)を軸に、認知症診断の神髄をコンパクトに解説。

国内屈指の圧倒的な症例数をバイブルとした、プライマリケアのための認知症診断マニュアルの最新改訂版。すべての医師・看護・介護スタッフにお勧めします。



<シリーズ1 改訂にあたって 全文>
 「痴呆症の診断」は、初版から4年半が経過しました。この認知症ハンドブックは、①・②・③ともにロングセラーとなっています。
 初版から新たに私が学んだ症例は、クロイツフェルト・ヤコブ病、ヘルペス脳炎をはじめ、レビー小体型認知症は年間100人を超す新患を診させていただいていますし、ピック病も受診が増えてきています。患者の年齢は35歳から102歳に及びます。
 時代の移り変わりに伴い、夫婦ともに認知症であるというケースが非常に増えてきました。最初に発病した患者の進行が遅いと、3年後には介護者のほうが速く認知症を悪化させてゆくという逆転現象も見られますし、改訂長谷川式スケール23点の夫が呆然としていて、10点の妻が薬の会計をちゃんと済ませるという笑い話のような光景を目にします。
 それを見るにつけ、生活能力というものは言語性知能検査スコアではなくて「生活勘」によるのだろうとつくづく思います。平成21年からいよいよ75歳時の運転免許適性試験に時計描画テストが導入されましたが、このような動作性知能検査の採用は、的確な判断だったと思います。  運転免許更新の可否を判定する公安委員会の指定医こそ、認知症診察のベテランであるべきで、ペーパードライバーのような医師であってはならないと思います。
 平成21年7月に私は個人開業いたしましたが、導入したマルチスライスCTはヘリカル撮影すればMRIのように3方向からの大脳画像が得られるため、今まで以上に冠状断から海馬の萎縮が、矢状断から前頭葉、側頭葉皮質の萎縮が鑑別しやすくなりました。ラクナ梗塞も水平断だけでは明確でなかったものが、冠状断や矢状断から見るとはっきりすることがあります。
 私は老年精神科のほかに神経内科も標榜していますから、小刻み歩行の原因としてパーキンソニズムだけでなく脊柱管狭窄症を鑑別する能力を問われます。マルチスライスCTの矢状断で眺めた脊髄は見事に狭窄部位を映し出すので、大変有用と言えます。
 画像よりも症候診断を重視するように執筆してきた私ですが、マルチスライスCTの有益性については、この改訂版で述べていきたいと思います。
 以前からMRIが認知症にマッチしないことは指摘されてきました。長時間じっとしておれない、未破裂動脈瘤に対するクリップ手術、ペースメーカー、人工骨頭などMRI検査のできない老人は意外と多いものです。
 CTでもヘリカル撮影をすれば早期肺がんの発見にも役立ちますし、肝障害、肺病変を施設入所時検査として短時間で白黒つけたい時に有用です。現に、開院の初日には42人のCT検査を行うことができました。
 ただ、マルチスライスCT導入で悩むことが一つあります。レビー小体型認知症というのは前頭葉萎縮の目立つ患者が多くて、あまりにも明確にその所見を突きつけられると、今までは自信を持ってレビー小体型と診断していたものを「ひょっとして前頭側頭型ではないか」と迷うようになったのです。
 新しい兵器の導入で私の辞書も改訂が必要になったのです。しかしご安心ください。「診断に固執するよりも患者を治すことを優先する」という私の処方哲学に揺るぎはありません。専門医とて「1回診ただけではわかりません。もうしばらく私に勉強させてください」と家族に言えばすむことです。
 介護保険の意見書にも、「当初はアルツハイマー型と診断していたが、現在はレビー小体型と考えて治療している」と正直に書くしかないと思います。プライマリケア医であればなおさらのことです。
 しかし、ここでみなさんに提言したいことは、「認知症」とだけ書く医師と「認知症(アルツハイマー型の疑い)」と書く医師を比べた場合、後者の戦う姿勢、診断しようとする意欲は高く評価されるべきと考えます。この本の読者もそうあってほしいと思います。

平成22年1月
著 者

●内容目次
1 認知症を早期発見する意義
2 認知症の診断手順
1. 認知症か非認知症か
2. 『診断基準』は早期認知症を見落とす
3 診断基準の限界
4 診療のきっかけ
1. 家族からの情報
2. 職員からの情報
5 認知症準備段階
1) AACD
2) MCI
6 診断に必要な検査項目
7 鑑別疾患
1. せん妄の取り扱い
2. レビー小体型認知症のせん妄
3. うつ病との即断は避ける
8 知能検査
1. ミニメンタルステート検査(MMSE)は行わない
2. 改訂長谷川式簡易知能スケール(HDS-R)を極める
3. 時計描画検査(CDT)
1) 時計描画検査の名称の決定
2) CDTの歴史
3) CDTの科学性
4) CDTの問題点
5) CDTのsensitivity(検出感度)とspecificity(疾患特異度)
6) CDTによる認知症の早期発見  など
4. 考案されつつある日本の簡易検査
5. WAIS-R
6. ベンダーゲシュタルト検査
9 認知症状の分類
10 病型診断
1. 臨床的鑑別法
1) Alzheimerization(アルツハイマライゼーション)とは何か
2) 臨床症状のAlzheimerization (clinical Alzheimerization)
3) HDS-R におけるAlzheimerization など
2) アポEアイソフォーム
3) 画像検査
1) CT
2) MRI
3) 認知症予防ドックで行う検査
11 認知症の病型
1. アルツハイマー型認知症(ATD)
2. 脳血管性認知症(VaD)
3. 混合型認知症
4. ピック病
5. びまん性レビー小体病(DLBD)
6. 正常圧水頭症(NPH) など
12 病名告知
巻末資料(外来セット)
  時計描画検査
  初診時問診票
  改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)

認知症ハンドブックシリーズ全3巻
シリーズ② 認知症の薬物治療
       ―アリセプトの使いこなしと介護を助ける処方―
シリーズ③ 認知症の介護、リハビリテーション、予防
        -合理的な介護と廃用症候群の阻止-
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