認知症ハンドブック③認知症の介護・リハビリテーション・予防<改訂版> ー合理的な介護と廃用症候群の阻止

認知症ハンドブック③

認知症の介護・リハビリテーション・予防 <改訂版>

―合理的な介護と廃用症候群の阻止

著:河野和彦(名古屋フォレストクリニック院長)
定価 本体3500円+税
A5判260頁
ISBN978-4-86270-164-0



●認知症患者の特徴をちゃんと踏まえて介護を実践するために、認知症専門医の立場から、介護者に必要な医学的知識(認知症の種類、多彩な症状・合併症、薬の知識、認知症以外の問題点など)をわかりやすく解説。

●『患者と介護者の一方しか救えないという状況なら、私は認知症の専門医として介護者を救うことを考えます』という著者の凛然たる「介護観」(介護哲学)をもとに、可能な限り楽に介護をするための処方・対応の工夫・ケアの考え方を著した1冊

シリーズの序より抜粋

 『介護疲れで、お嫁さんが先に逝ってしまった』という話は現実に存在します。現代の医療レベルではアルツハイマー型認知症は治りません。患者と介護者の一方しか救えないという状況なら、私は認知症の専門医として介護者を救うことを考えます。その私の『介護観』に賛同していただけるなら、薬の勉強をしましょう。そして、不治であるはずの患者が1年、2年と安定して笑顔の見られる毎日を過ごせたら、あなたは患者が不治であることも忘れて満足のいく介護期間を過ごせるでしょう。『介護してよかった』というあなたの一言を聞きたいがために、私は一生懸命にこの本を書きます。

(河野和彦)

改訂版の序より

 初版の時代からアルツハイマー型認知症治療薬は4成分に増え、認知症は予想通り急増し、介護施設では多くの問題が噴出しつつあります。施設で職員が利用者を虐待する事例はあとをたちません。患者の人権を守ろうというだけでは、問題は解決しません。まずは、職員がストレスをためる労働条件になっていることを解消しなければなりません。
 コウノメソッドは2007年から公開され毎年更新されています。その第一の柱は「介護者保護主義」です。世間が、パーソン・センタード・ケアを強調するのなら、私は介護者にも人権があるという意見も発信する必要性を感じました。
 2014年12月に起きた川崎の老人ホーム転落死事件。当時21歳だった新人職員が、3人の当直勤務者にまじって80人の利用者を看ていました。仕事の習熟度も低いうちから、誰も助けてくれない、分刻みの業務表に従い、難聴で認知症の女性から介護抵抗を受け、数十回のナースコールにせかされる毎日だったそうです。県警の幹部は、介護現場がこれほど過酷なのかと驚いたそうです。
 業界全体の人手不足が慢性化し、職員がいつ辞めてもおかしくない状況で、何も知らない新人が採用され投げ出される世界。ストレスがないわけがないでしょう。私の知るグループホーム施設長が、近隣にできた施設が一晩4万円で臨時職員を募集していたと嘆いていました。日本の福祉は危機的状況です。
 私は、薬で利用者が素直で平和に過ごせるよう工夫し、アルツハイマー型認知症治療薬が攻撃性を増すことに引き続き警鐘を鳴らします。一方で高齢化し脳病変も重複化している認知症の鑑別診断に医療費をかけることをやめさせ、その分を介護職員に分配するのがよいと思います。
 認知症は大学や病院でなく、診断も治療もケアも開業医が行うべきと思いますし、そうできるように著書や講演でお話してきました。もはや、認知症の医療にこれ以上の無駄な検査、意味のない新薬はストップです。
 一方、福祉にはもっと費用を投入しなければなりません。介護者に気持ちと体力の余裕がないかぎり、認知症の介護の世界に笑顔が戻ることはないでしょう。
 私は、誰もが楽に介護できるよう薬で解決できる最大限の努力をしようと思っています。介護者は自分を助けるために薬のことを勉強しましょう。

(河野和彦)

目次

改訂版の序にかえて

はじめに

シリーズの序 ~シリーズ3にあたって

本書で用いる主な略語

1章 認知症の介護と処方

1.介護の心得
2.介護者・介護スタッフの育て方
3.認知症に似た症状
4.病棟での認知症への介入
5.感情の障害への対応
6.患者の性格
7.老人の転倒
8.多動行動のケア
9.認知症症状に使う薬
10.DBC(Dementia Balance Check)Sheet(認知症バランスチェックシート)
11. コウノカクテル

2章 認知症の種類

1.病型を知れば介護もうまくできる
2.アルツハイマー型認知症(ATD)
3.パーキンソニズム
4.レビー小体型認知症(DLB)
5.ピック病
6.脳血管性認知症(VD; Vascular dementia)
7.混合型認知症
8.Treatable dementia(治癒しうる認知症)
9.肝性昏睡、肝性脳症
10.クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)
11. 進行性核上性麻痺(PSP)
12. 皮質基底核変性症(CBD)
13. 多系統萎縮症(MSA)  

3章 認知症のリハビリテーション

1.大脳機能の賦活療法
2.残存機能評価
3.廃用症候群の阻止
4.認知症のリハビリテーション

4章 認知症の医学的側面

1.認知症患者が持つ認知症以外の問題点
2.排尿の問題
3.浮腫
4.口腔内衛生
5.老人の肺炎
6.結核
7.老人の感染症
8.漢方薬と免疫力
9.不顕性誤嚥
10.起立性低血圧
11.糖尿病と低血糖
12.『ストレス』の弊害
13.疥癬
14.帯状疱疹
15.栄養管理
16.骨折予防
17.腰痛
18.摂食困難
19.低ナトリウム(Na)血症
20.ビタミンB1欠乏
21.脳梗塞の薬の管理
22.横紋筋融解
23.AED(Automated External Defibrillator、自動体外式除細動器)

5章 地域の介護システム

1.新介護保険制度のねらい
2.支援機器
3.介護保険の給付対象施設
4.認知症患者を地域が支えるシステム
5.地域での早期発見事業

6章 老人介護の社会的問題

1.施設での看取りの不安
2.療養病床を介護施設に移すという厚生労働省案
3.不適切処遇~虐待~
4.男性による介護の盲点
5.グループホームの安全性~自由と管理の挟間で~
6.認知症患者の運転
7.認知症患者の権利擁護・財産保護
8.家庭での介護力の低下

7章 認知症の予防

1.介護予防
2.動脈硬化阻止を主体に考える介護予防
3.一次予防(健康な状態のうちに注意すべきこと)
4.二次予防(動脈硬化の危険因子が発生してしまったあとにすべきこと)
5.三次予防(脳梗塞、心筋梗塞を起こしてしまったあとにすること)
6.降圧と認知症の関係
7.運動不足と『生活不活発病』
8.性格
9.うつ状態
10.アルツハイマー型認知症の危険因子
11.アルツハイマー型認知症の進行抑制薬
12.認知症予防ドック

改訂版のむすび

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